外国人採用を行う際、様々な手続きがあり多数の必要書類を用意しなければいけません。
手続きを怠ると罰せられることもあり、書類などに不備があると入社が遅れてしまうこともあります。
どの状況に、どのタイミングで、どのような書類が必要なのかをご説明します。
外国人採用をする前に確認すべき3つのポイント
▼ ポイント1 就労ビザ取得の見込みがあるか
採用の前段階として面接などの採用試験を行うケースがほとんどですが、その前に「面接予定者が就労ビザを取得しているか(取得の見込みがあるか)」を確認する必要があります。
なぜなら、面接などの採用試験を通過して内定を出したものの、就労ビザを取得できず入社に至らなかったとなっては、企業側・面接者の両方にとって、時間の面でも費用の面でもムダなコストとなってしまうからです。
実際に行政書士法人Climbへ外国人からご相談があったケースでは、日本の地方大学に在学中に東京にある企業の内定がとれて、大学4年生の半ばに退学して東京へ引越し、在留資格「技術・人文知識・国際業務」へ変更しようとしたところ、企業と連絡が取れず途方に暮れているといったケースがありました。
この外国人の方は母国での学歴が高卒で日本でも日本語学校を卒業した後に日本の地方大学に入学し、退学したので「技術・人文知識・国際業務」へ変更するために必要な学位がありませんでした。
そのため、この外国人が「技術・人文知識・国際業務」を取得する手段は復学できない限りなくなってしまいました。
企業が在留資格に関する知識があったかどうかはわかりませんが、恐らく知識があれば防げたトラブルだったと思われます。
この外国人自身も在留資格に関する知識が足りず、自業自得の面もありますが、少なくともこの企業は一人の人間の将来に大きなダメージを与えたのは間違いありません。
これはコストが掛かったというレベルの話ではないので、このようなことが無いよう、双方が適切な知識を得ることが必要と考えます。
▼ ポイント2 採用ポジションがどの在留資格に該当するか
2021年11月時点で、日本に一定期間以上滞在する場合は「25種類の在留資格」と「4種類の身分系在留資格」の中からいずれかを取得する必要があります。
日本国内の企業に就業する場合は、29種類の在留資格の中から採用ポジションに該当する在留資格の取得申請を行う必要があるため、採用する前に募集する職種がどの在留資格で申請すればよいのか事前に確認をしておくと申請がスムーズに進みます。
あくまでも在留資格はその仕事内容に応じて与えられます。
そのため、ある程度の規模の企業であれば複数の職種がありますが、気軽に配置転換をすることにはリスクがあります。
大学を卒業後(学位有り)に技術・人文知識・国際業務の在留資格得た方は、ある程度多くの職種に就くことができるので同時に配置転換できる可能性もありますが、専門学校卒(専門士の資格有)の方ですと話は別です。
大学卒の場合その専攻と仕事内容の関連性は割と緩やかにみられますが、専門学校卒の場合、その専門学校のカリキュラムで学んだ内容と一致しない限り在留資格が与えられないのです。
もちろん、技術・人文知識・国際業務であれば専攻と一致していても、現場作業や単純労働、技能職は不可です。
それゆえ、日本企業でよくある総合職は外国人の在留資格に合わないと言えるでしょう。
技術・人文知識・国際業務の在留資格を所持できたとしても、入社後の配置転換を想定しているのであればどの様な職種がありえるのか、その外国人の経歴でその配置転換は問題ないのかを良く検討した上で採用する必要があります。
▼ ポイント3 採用予定者が現在どこに住んでいるか
採用予定者が国外にいる場合は、入国管理局にて在留資格の申請手続きを進める必要があります。
一方で国内在住者はすでに在留資格を保持しているため、在留期間の更新手続きまたは更新資格の変更手続きを行うことで、採用を進めることができます。
国内にいる外国人を雇用する場合
日本国内において、外国人は保持している在留資格以外での活動はできません。
それゆえ、業務内容と在留資格にて指定されている活動内容が一致している必要があります。
例えば、オフィスワーカーとして採用するのであれば「技術・人文知識・国際業務」、介護職なら「介護」という資格が必要です。
国外在住外国人の申請の場合、通常雇用する企業の担当者が代理人となって申請をします。
その場合、その代理人の住所もしくは企業の住所を管轄する出入国在留管理局で申請します。
対して国内在住外国人の場合、基本的には本人が申請し、申請先は本人の住所を管轄する出入国在留管理局が原則申請先となります。
ただ、現在は外国人が配属される勤務地の住所または本社等人事を行う部署の住所を管轄する出入国在留管理局でも申請をすることが認められております。
- 【確認書類一覧】
- ・在留カード
- ・旅券(パスポート)
- ・卒業見込みまたは卒業証明書 ※留学生を採用する場合
万が一、在留資格の範囲外の活動を行ってしまった場合には、資格外活動違反として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が処されるか、これらを併科されます。
同じく、不法滞在者を雇用すると不法労働助長罪として刑罰の対象となる可能性があるので、採用時には入念なチェックが必要です。
在留カードで在留資格を確認する際のポイントは、中央に記載されている「在留資格の種類」と「就労制限の有無」です。
そして、必ず原本を確認して、更に確認したことをエビデンスとして残してください。
近年、偽造在留カードが多く出回っています。5,000円程度から購入できるのも要因でしょう。
そしてこの偽造在留カードの多くが本物の情報を基に作成されているので、在留カード番号等は生きています。
ですので本物か偽物かを見抜くのは難しいです。
ただ、企業として大事なのはちゃんと確認すべきことをしているかどうかです。
本物か偽物かを見抜けないこと自体は仕方がないことですが、企業の責任として在留カードを確認したかどうかで、問題が起こった時の責任の大きさが異なってきます。
当社の顧問先でも、偽造在留カードと知らずに雇用してしまった外国人が警察に摘発された際、在留カードの確認をしたエビデンスを開示したため、警察の心証もその後の状況も良かったという事例があります。
また異なるケースで、入社当初は適切な在留資格を所持していたものの、外国人が在留期限の更新を怠り、在留資格を失っていたものの、企業には更新できたと嘘をつき、企業側も在留カードの原本を確認しなかったために警察に摘発されたという事例もあります。
在留期限や在留カードを適切に管理するということが外国人を雇用する企業には必要な要件になっているということです。
在留カードに記載されている活動以外の業務を行う場合は、随時在留資格の変更手続きや資格外活動外許可申請をする必要があります。
例えば、採用するのが留学生の場合、在留資格が「留学」になっており、そのままでは働けません。
ただし、資格外活動の許可を受けていれば、週28時間まで働くことができます。(風俗営業等の従事を除く)
一方で、以下の4つの在留資格は活動の制限が無く、法律に違反しない限り日本人と同様にどのような職種でも労働可能です。
- ・永住者(永住権を取得している外国人)
- ・永住者の配偶者等(日本で出生・在留している子どもを含む)
- ・日本人の配偶者等(実子、特別養子も含む)
- ・定住者(日系人や外国人配偶者の連れ子など)
▼ 入社前に完了すべき書類手続き
■ 現在保持している在留資格の種類の確認
在留カードを保持している外国人を採用する場合は、在留資格の種類を確認しましょう。
業務内容と現在保持している在留資格が異なる場合は、在留資格の変更手続きを行う必要があります。
■ 在留資格の変更方法
例えば、日本で留学中の外国人学生を採用する場合、留学の在留資格から就労の在留資格へ切り替える必要があります。
原則、留学生本人が変更手続きを行いますが、会社側でもいくつかの資料を準備しておくとよいでしょう。
- <企業側が用意する必要書類>
- ・雇用契約書のコピー
- ・会社の登記簿謄本および決算報告書のコピー
- ・会社案内などのパンフレットなど
- ・雇用理由書
- <学生が用意する必要書類>
- ・パスポート、在留カード
- ・在留資格変更許可申請書
- ・履歴書
- ・申請理由書
- ・卒業証明書または卒業見込み書
■ 在留資格の申請方法、期間、申請場所など
申請を行う場所ですが、地方入国管理局または外国人在留総合インフォメーションセンターにて可能です。
手続きが完了されるまでに約2週間~1ヶ月かかるのが一般的です。
もし申請中に在留資格の滞在期限が切れる場合でも、在留期間の満了日から2ヶ月間は、引き続き当該在留資格で国内に滞在することが可能となっています。
在留資格の有効期限を確認し、早めに手続きを進めるようにしましょう。
国外にいる外国人を雇用する場合
原則、大学卒業者または関連する職種での職務経験が一定年数以上ないと在留資格が下りない可能性があります。
まずは下記を確認しましょう。
▼ 申請に必要書類
■ 確認書類(内定前)
- ・大学の卒業証明書
- ・職務経歴書
■ ビザ申請用の必要書類(内定後)
- <企業側が用意する必要書類>
- ・雇用契約書
- ・全部事項証明書(企業謄本)
- ・決算報告書のコピー
- ・会社案内などのパンフレットなど
- ・社内の写真 ※任意
- ・雇用理由書 ※任意
- <学生が用意する必要書類>
- ・卒業証明書または卒業見込み書
- ・パスポート
- ・日本語検定の合格証明書 ※任意
- ・無犯罪証明書 ※任意
日本国内に在住する外国人と比べ、申請に手間がかかると思うかもしれませんが、不法滞在者でないかの確認もできるので、安心して在留資格取得の手続きを進めることができます。
ただ申請する企業の規模や本人の学歴や職歴によって、在留申請が受理されるまでの期間が1ヶ月から1年ほどまでとかなり幅があります。
早めの申請手続きを心がけましょう。
■ 在留資格の申請方法、期間、申請場所など
入国管理局への申請や手続きは行政書士に依頼することができます。
申請在留資格の種類や企業規模によって、申請期間はさまざまです。
申請にどれくらいの期間がかかるか一概には言えません。
一年越しで許可が下りることもあれば、一週間の場合もあります。
■ ビザ申請以外の必要書類
原則、日本人と同様に入社手続きを進めれば問題ありません。
雇用保険、社会保険、住民税や所得税の手続き、ほか銀行口座の開設も進めてください。
ただし、外国人のため申請が受理されるまで通常より時間がかかる可能性があります。
前もって準備を進めることで、安心して入社日を迎えることができるでしょう。
企業の準備が遅く、なかなかビザ申請をしてもらえないことで、企業に対して不信感が募り、内定を辞退する外国人も少なくありません。
日本での在留を希望している以上、ビザ(在留資格)のことは外国人にとってかなり大きな問題です。
特に、外国人の採用に慣れていない企業だと申請までに時間がかかってしまうケースが多いですが、できるだけ早く申請してあげることが重要です。
■ 住民登録
国外に住む外国人を採用し、来日してもらうにあたり、当然ですが居住地が必要になります。
本人の希望を聞きつつ居住地を決めるサポートをしましょう。
居住地が決まったら、住民登録が必要になります。
住民登録は、居住地の住所を管轄している市区町村役場にて、居住者本人が入国後14日以内に行う必要があります。
もし本人一人での登録に不安があるようなら、登録のサポートも行います。
住民登録は、上記でビザ申請以外の必要書類としてご紹介した、給与を受け取るための銀行口座の開設などにも必要になります。
また、住民登録をすれば在留カードに居住地を記載してもらえるため、パスポートを持ち歩く必要もありません。
■ 現在保持している在留資格の種類の確認
在留カードを保持している外国人を採用する場合は、在留資格の種類を確認しましょう。
業務内容と現在保持している在留資格が異なる場合は、在留資格の変更手続きを行う必要があります。
■ 在留資格の変更方法
例えば、日本で留学中の外国人学生を採用する場合、留学の在留資格から就労の在留資格へ切り替える必要があります。
原則、留学生本人が変更手続きを行いますが、会社側でもいくつかの資料を準備しておくとよいでしょう。
入社後行うべき3つのポイント
▼ ポイント1 外国人雇用届をハローワークへ提出
雇用保険の被保険者の場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」の備考欄に、採用者の国籍・地域・在留資格・在留資格の種類・資格活動外許可の有無などを記載し、ハローワークへ届出を出す必要があります。
入国管理局また雇用対策法で定められた提出物となるので、申請を忘れずに行いましょう。
▼ ポイント2 在留資格の更新手続き
就労ビザの中でに申請数の多い「技術・人文知識・国際業務」を例に説明します。
ビザの有効期限は1年・3年・5年と人によって期間に差がありますが、更新タイミングを忘れ在留資格の有効期限が切れたまま就業を続けた場合、不法滞在とみなされ国から罰金を徴収されるケースも稀ではありません。
更新は有効期限が切れる3ヶ月前から申請が可能です。
再申請には約1ヶ月かかるので、遅くても有効期限が切れる2ヶ月前には入国管理局へ再申請の手続きを進めましょう。
ただし前述の通り、活動内容に変更があった場合は、活動に該当する適切な在留資格にて新たに申請し直す必要があります。
- <再申請に必要な書類一覧>
- ・在留期間更新許可申請書類
- ・パスポート
- ・在留カード
- ・在職証明書や雇用契約書の写し
- ・住民税の課税証明書
▼ ポイント3 雇用契約書の作成
採用した外国人とは、入社後の給料などの条件を話し合い、雇用契約書を取り交わしましょう。
雇用契約書は、日本人労働者の場合は取り交わしを後回しにするケースなどもありますが、外国人労働者の場合は入社前に完了しておくことをおすすめします。
国にもよりますが、外国だと書類による契約を日本より重視している国が多いことが理由です。
また、外国人労働者とはコミュニケーションの難しさによりトラブルを引き起こす可能性があるため、事前に防ぐ意味でも雇用契約書を取り交わしておくメリットがあります。
なお、雇用契約書等を労働者と取り交わすことは企業の義務とされており、雇用契約書等を労働者に配布しなかったことで起きたトラブルは企業の責任となります。
雇用契約書は日本語とは別に、英語や外国人労働者の母国語に翻訳したものを作成し、両方を配布するのがおすすめです。
外国人雇用の手続きで利用できる支援
外国人の雇用にかかる手続きは日本人の雇用と比べて煩雑であり、慣れていないとミスをする可能性もあります。
以下、手続きの際に利用できる支援についてご紹介します。
- ■ 外国人雇用管理アドバイザー制度
- 厚生労働省が行っている、外国人雇用対策のひとつです。
外国人雇用の手続きや管理、採用後の職場生活まで、さまざまな悩みを無料で相談できます。
外国人雇用管理アドバイザーは各都道府県に設置されているため、最寄りのハローワークに相談することでアドバイザーを派遣してもらえます。 - ■ 外国人採用支援サービス
- 外国人の採用に関する支援サービスの中には、手続きの代行や必要書類の作成、アドバイスをトータルでサポートしてくれるものもあります。
例えば、Bridgersでは、社労士への相談窓口や各種手続きの代行など、ビザの申請から就労までをトータルサポートすることが可能です。 - ■ 行政書士
- 在留資格の更新や変更、永住許可の申請、再入国許可の申請、資格外活動許可の申請など、入国管理局にて行わなければならない各種手続きは、申請人である外国人に代わって申請することが認められている「申請取次行政書士」に依頼できます。
採用した外国人が入国管理局へ赴く必要がなくなるため、企業側が行政書士への依頼をサポートすることでスムーズな雇用につながります。
行政書士には他にも、履歴書や在職証明書などの和訳、雇用契約書の作成、雇用契約書のリーガルチェックなどを依頼できます。
まとめ
国外在住者は、就労ビザの申請から行う必要があるので時間と労力が要ります。
ビザ申請代行サービスなどを使用し、確実に許可されるように手続きを進めると良いでしょう。
国内在住者を採用する場合も、在留資格の種類・更新時期のチェックが必要ですので気を抜けません。
国内・国外在住にかかわらず、採用前には事前確認を必ず行い、無事に入社・雇用ができるよう準備しましょう。