「特定技能でベトナムから人材を受け入れるには?」
「国内からでも、採用できる?」
新たに創設された特定技能の在留資格。ベトナムは、日本が主要受け入れ国としている国の一つです。2018年時点で、技能実習生をふくむ多くのベトナム人が日本に滞在しており、特定技能への移行が予想されます。今回は、在留ベトナム人の現状を紹介するとともに、特定技能を利用してベトナム人を雇用するために、知っておくべき基本情報をご紹介します。
目次
日本に滞在するベトナム人を取り巻く現状と取得している在留資格の種類
2018年時点で、日本に滞在するベトナム人の数は29万人に上ります。その4割以上が技能実習生として滞在しています。取得する人数が多い在留資格の種類は、以下の通りです。
【ベトナム人の取得数の多い在留資格の種類】
在留資格の種類 | 人数 | ベトナム人総数に占める割合 |
技能実習 | 134,139人 | 44.9% |
留学 | 80,683人 | 27.0% |
技術・人文知識・国際業務 | 28,723人 | 9.6% |
家族滞在 | 13,129人 | 4.4% |
<参考:e-Stat在留外国人統計 2018年6月「国籍・地域別 在留資格(在留目的)別 在留外国人」>
1番多い在留資格は、全体の半数近くになる技能実習です。
2番目の留学とあわせて、総人数の7割を占めます。
特定技能は学歴・職歴不問の在留資格です。
日本語・技能評価試験の合格が一番のポイントで、それをパスすれば雇用契約を結んだ外国人は基本的に申請できます。
技能実習2号を修了した外国人が、日本語・技能評価試験免除で特定技能に移行できる特例もあります。
そのため、既存の就労可能な在留資格を取得していた層からの移行が予想されます。
特定技能の在留資格(ビザ)でベトナム人を受け入れる3つのメリット
現時点で、13万人以上のベトナム人が技能実習生として滞在しています。
それ以外で、専門職に適用される技術・人文知識・国際業務の在留資格でも3万人近くが就労しています。
こうした在留資格と比較して、特定技能を利用するメリットを3つご紹介します。
申請条件が緩和され、就労可能な在留資格をとりやすくなった
特定技能の在留資格の特徴は、申請条件が緩和されていることです。
学歴と職歴を求められないため、多くの外国人に取得のチャンスがあります。
とくに特定技能は勤務時間の上限がなく、フルタイムを対象とした在留資格です。
そのため、留学・家族滞在でアルバイトやパートタイムスタッフとして働いていた外国人にとって、特定技能は正社員への足掛かりになります。
外食や宿泊、これまでの技能実習制度にはない産業分野で雇用が可能に
特定技能では、利用できる産業分野が定められています。外国人を受け入れる企業・団体が、以下の分野に属している業態でなければいけません。
これには、技能実習にはなかった外食や宿泊の分野も認められています。
こうした業界では、外国人を雇用しやすくなり人手不足解消に役立ちます。
特定技能の対象14分野 |
介護 |
ビルクリーニング |
素形材産業 |
産業機械製造業 |
電気・電子情報関連産業 |
建設 |
造船・船用工業 |
自動車整備 |
航空 |
宿泊 |
農業 |
漁業 |
飲食料品製造業 |
外食業 |
農業・漁業では派遣就労も可能。より柔軟な雇用形態に
特定技能は、受け入れ機関である企業と外国人の直接契約が基本です。
かし、農業・漁業の分野では例外として派遣の就労形態も認められます。
これは、この2つの分野が繁忙期によって必要な労働需要が著しく変化するためです。
ただし、人材派遣元もこれらの業界に属している必要があります。
農業と漁業の分野は、すでに多数の外国人を技能実習生として受け入れています。
JITCO(国際研修協力機構)のデータ(2016年)によれば、農業分野でベトナム人の受入れ人数(技能実習2号)が多いのは、熊本県(448人)、茨木(447人)、北海道(323人)です。[1]https://www.jitco.or.jp/about/data/Book8.pdf
これらの外国人は、今後特定技能に移行する可能性がおおいにあります。
また、業界内での派遣事業の整備が整えば、企業にとって外国人を雇用する形式の選択肢が増えることになります。
ベトナム人が特定技能を取得するための条件は?日本語レベルと技能試験
特定技能の在留資格を取得するには、日本語能力試験と技能評価試験の両方に合格する必要があります。
求められる日本語のレベルと、技能評価試験について解説します。
求められる日本語レベルは日常会話ができ生活に支障のない程度
特定技能で規定されている日本語能力試験は、以下の2つです。
- 国内:「日本語能力試験」N4以上
- 国外:「日本語能力試験」N4以上 または「国際交流基金日本語基礎テスト」
外国人雇用で気になるのは、採用する本人の日本語レベルです。
上記の試験の合格目安になるのは、いずれも「日常会話レベル」と規定されています。
ベトナムでも実施される「国際交流基金日本語基礎テスト」はヨーロッパ言語共通参照枠に基づくA2レベルを目安としています。
【A2レベルの目安】
- ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。
- 簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる。
- 自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。
<引用:国際交流基金>
ベトナム現地から人材を受け入れる際は、雇用後に日本語のサポートが必要なケースも想定しておきましょう。
クリアするべき技能評価試験は業界別に実施
スキルを評価する技能評価試験は、分野別に実施されます。
詳細は、管轄する省庁のウェブサイトをご確認ください。
- 厚生労働省:介護、ビルクリーニング
- 経済産業省:素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業
- 国土交通省:建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊
- 農林水産省:農業、漁業、飲料品製造業、外食業
2019年4月の時点で、国内では外食業や宿泊業、介護の分野での技能評価試験の運用が始まっています。
ベトナムをはじめとする海外での実施は現在調整中です。
介護の試験のみ、4月にフィリピンで第1回の技能試験が開催されました。[2]https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44220280V20C19A4EA2000/
ベトナム人の受け入れが多い建設業では、2019年度中にベトナムでの技能評価試験を実施する予定と国土交通省が発表しています。
ベトナムからの直接受入れに重要な二国間協定と現地送り出し機関の関係
特定技能において、政府は外国人受け入れの実績がある8か国と、順次二国間協定を結んでいます。
協定では、海外現地国の窓口を明確にするとともに、現地送り出し機関とのルールを定めています。
法務省のウェブサイトによれば、2019年4月時点で以下の4か国と協力覚書を結んでいます。
- フィリピン
- カンボジア
- ネパール
- ミャンマー
ベトナム政府とも特定技能外国人の送り出しについて実質合意がとれており、二国間協定の作成後に法務省のサイトで発表される予定です。
ベトナム現地から人材の受け入れを検討している企業・団体の方は、どこが送り出し機関として認定されるのか確認してください。
国内でベトナム国籍の人材を採用する方法|直接雇用と技能実習からの移行
国内でベトナム人を雇用する方法は、以下の2つがあります。
- 新たな人材を採用し、雇用関係を結ぶ
- 技能実習2号の修了生を雇用する
国内の人材を直接雇用するときは、試験の合否を確認する
特定技能の在留資格を利用する際、技能実習生の監理団体や協同組合といった仲介業者を介す必要はありません。
企業が採用募集を出し、応募してきた外国人を直接雇用することが可能です。
雇用の際は、必要な日本語能力試験と技能評価試験に合格しているかを必ず確認してください。
なお、企業の内定出し(雇用契約の締結)が、試験の合否結果発表と前後しても問題はありません。
在留資格申請時には、必ず試験に合格している必要があります。
雇用契約は、給与水準や有給取得、社会保険の基準等を遵守する
外国人だからという理由で、雇用契約に差別的な対応をすることは許されません。
とりわけ、特定技能の雇用契約の基準として、所定労働時間や給与・福利厚生等の報酬、有給の取得について明確に定められています。
認められるのは、週5日以上30時間労働以上のフルタイムのみ。
さらに、給与水準は同じ職務に従事する日本人と同等以上にすること、と決められています。
雇用契約を結ぶ際、不当に差別する条件になっていないか注意してください。
技能実習2号の修了生は、試験免除で特定技能を申請できる
技能実習2号の修了生は、日本語・技能評価試験免除で特定技能の在留資格を申請できます。
ただし、特定技能で申請する分野と技能実習を修了した分野が関連していることが条件です。
たとえば、農業の分野で特定技能を申請する外国人は、「耕種農業」もしくは「畜産農業」の職種名で技能実習を修了していなければいけません。
【技能実習と特定技能の移行対象職種と分野の例】
<出典:法務省 在留資格「特定技能」について>
特定技能へ移行する技能実習2号への期間限定特例措置
特定技能1号へは、必要な支援計画を実施しなければなりません。
しかし、2019年4月の在留資格創設時点では、分野別の評価技能試験の設置や、支援計画を請け負う登録支援機関の届出の準備など、同時進行で体制準備が進められています。
そのため、2019年9月末までに在留期間が終了する以下の外国人は、特例措置として4か月の「特定活動」(就労可)が認められます。
■特例措置が認められる外国人
技能実習2号で在留した経歴を有し、2019年9月末までに在留期間が満了する下記のもの
- 技能実習2号
- 技能実習3号
- 特定活動(外国人建設就労者または造船就労者として活動している者)
■許可される在留資格と在留期間
特定活動(就労可能)を4か月の滞在期間付与される(原則として、更新は不可)
これにより、受け入れ機関が登録支援計画が整っていない段階や、技能評価試験が準備中の分野でも、特定活動の在留資格で暫定的に当該外国人を雇用することができます。
許可される要件について詳しくは法務省のサイトをご確認ください。
<参考:法務省 在留資格「特定技能」へ変更予定の方に対する特例措置について>
まとめ:ベトナム人の技能実習生・留学生で特定技能の申請が増える可能性
日本に住んでいるベトナム人の大半を占めるのは技能実習生と留学生です。
現在雇用している外国人が、特定技能の在留資格への切り替えを希望するかもしれません。
その際は、受け入れ機関である企業・団体に求められる要件を理解しましょう。
また、当該外国人が日本語能力試験と技能評価試験に合格しているかが、重要なポイントです。
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