建物内の清掃を行うビルクリーニング分野は、特定技能の在留資格が認められた産業分野の一つです。
ビルクリーニングの業界は、年々人手不足が指摘されており、外国人の受入れにより企業の採用状況が好転することが予測されます。
ここでは、ビルクリーニング分野で外国人を雇用するにあたり、必要な条件や認められる業務内容、求められる試験について解説します。
ビルクリーニング分野で特定技能の外国人を受け入れる背景と見込み人数
2019年から向こう5年間、特定技能のビルクリーニング分野において、政府は37,000人の外国人受入れを想定しています。
同業界では、清掃機械の開発やロボット化の普及による生産性の向上、また女性や高齢者といった雇用促進の取り組みを進めていますが、人手不足は解消されていません。
有効求人倍率は、2017年には2.95倍に達し、人手不足が続けば建物の衛生状態が悪化、利用者の健康が損なわれるおそれがあると懸念されます。
ビルクリーニング業は、同じく2017年より技能実習の対象職種となっています。
しかし、それだけでは人手不足には対応できないため、特定技能の在留資格により新たな外国人への窓口が開かれました。
5年以内に受け入れ想定人数に達すれば、政府がビルクリーニング分野での特定技能外国人受入を停止する可能性もあります。
特定技能の在留資格で認められるビルクリーニング業務とは
厚生労働省の発表する「運用に関する方針」では、特定技能で認められるビルクリーニング業務について、以下のように定めています。
- 建物内の清掃
- 衛生的環境の保護、美観の維持、安全確保および保全向上を目的とする清掃作業、建築物に存在する環境上の汚染物質を排除し、清潔さを維持する業務
なお、東京電力が行う原子力発電所での放射線業務等に特定技能外国人を従事させる場合は、安全衛生管理対策のガイドラインに基づいたうえで、慎重に検討の上、厚生労働省に検討結果を報告するよう、厚生労働省は通達をしています。
▼参考
東京電力福島第一原子力発電所における特定技能外国人労働者に対する労働安全衛生の確保について
ビルクリーニング分野で、外国人が特定技能ビザを取得するのに必要な条件
ビルクリーニング分野は特定技能1号のみ認められます。2号での適用はありません。
そのため、特定技能の在留資格を有した外国人が働けるのは、5年が上限です。
ビルクリーニング分野では、ほかの産業分野と同様に、以下の3点が基本の申請条件です。
- ● 18歳以上であること
- ● 規定の日本語能力試験を合格していること
- ● 規定の技能評価試験に合格していること
以下に、日本語試験と技能評価試験についてご説明します。
▼ ビルクリーニング分野で認められる日本語試験と必要なレベル
ビルクリーニング分野では、在留資格を得るには以下の日本語試験に合格しなければいけません。
- 国内
- 「日本語能力試験」N4以上
- 国外
- 「日本語能力試験」N4以上 または「国際交流基金日本語基礎テスト」
「日本語能力試験」または「国政交流基金日本語基礎テスト」では、ある程度の日常会話ができるかどうか、生活に支障がない程度の日本語能力を持っているかがチェックされます。
▼ ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験とは
ビルクリーニング分野での技能評価試験は、「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」が利用されます。
これは、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が実施主体となって行う実技試験です。
日本語で行われ、2019年の秋以降に国内外各地で実施される予定です。
多数の利用者がいる建築物の内部において、適切な手法や洗剤等を用いて清掃業務を行う技術を有しているかを確認します。
▼ ビルクリーニング分野で試験が免除される人材
技能実習でビルクリーニング職種の2号修了生は、技能評価試験免除で特定技能1号へ移行が可能です。
なお、日本国内で以下の立場にいる外国人は、技能評価試験を受験することはできません。
- 【技能評価試験を受けられない外国人】
- ● 退学・除籍処分となった留学生
- ● 失踪した技能実習生
- ● 在留資格「特定活動(難民認定申請)」
- ● 在留資格「技能実習」で実習中
ビルクリーニング分野で受け入れ機関に求められる条件
外国人を特定技能で雇用する企業・団体(受け入れ機関)は、以下の点を遵守することが求められます。
- ● 「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録をうけていること
- ● ビルクリーニング分野特定技能協議会へ加入すること
- ● 協議会が求めた際、調査や指導に必要な協力を行うこと
▼ ビルクリーニング分野特定技能協議会とは?
ビルクリーニング分野特定技能協議会とは、特定技能外国人の受入れと制度運用に関する情報を共有し、スムーズな運営の実現を目指すために設置されました。
以下の構成員によって組織されています。
- ● 法務省出入国在留管理庁
- ● 警察庁刑事局組織犯罪対策部
- ● 外務省領事局
- ● 厚生労働省職業安定局
- ● 特定技能所属機関(現に1号特定技能外国人を受け入れている機関に限る)
- ● 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会
- ● 厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課(事務局)
また、協議会は状況に応じて、受け入れ機関に以下の協力を要請します。
- ● 特定技能外国人の受入れに係る状況の全体的な把握
- ● 問題発生時の対応
- ● 法令遵守の啓発
- ● 特定技能所属機関の倒産時等における特定技能外国人に対する転職支援
- ● 就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析等
参考:『ビルクリーニング分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
⇒ビルクリーニング分野特定技能協議会加入申請ページへ
適性な運用のため、受け入れ機関は守るべき義務を理解した上で、外国人を雇い入れましょう。
▼そのほか、受け入れ機関が守るべき雇用条件はこちら
特定技能の受入れ機関とは?特定技能ビザで外国人を雇用できる基準と義務
▼特定技能1号外国人におこなうべき、支援計画(サポート)についてはこちら
登録支援機関とは?|登録に必要な要件と特定技能1号への支援計画内容
まとめ:受入れ機関は運用開始までに体制を整えて
ビルクリーニング分野での特定技能外国人の受入れは、2019年夏時点では技能評価試験が実施されていないこともあり、運用は始まっていません。
外国人雇用を検討している企業は、受け入れ機関に求められる体制や守るべき雇用条件、義務としておこなう支援計画をしっかりと理解し、企業内の環境を整えましょう。