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今回は就労ビザを持つ外国人労働者の方にフォーカスしてお話していきます。
 日本で働く外国人労働者は年々増加の傾向にあり、労働市場でも注目を集めています。
 今回はそんな労働市場を背景に、外国人の方々の転職する際の手続きとその際の注意点などについて、雇用者側と労働者側の両方の視点で詳しくお話します。
外国人は日本で転職できる?
▼ 身分系ビザと就労系ビザ
そもそもほとんどのビザ(在留資格)は転職が基本的に可能です。
 外国人の方が適法に働く際に必要なビザは大きく分けて2パターンあります。
一つは“身分系ビザ”と呼ばれる、永住権や日本人の配偶者等の在留資格です。
 これらのビザの特徴は就労制限が無い事が挙げられます。
 一方“就労系ビザ”と呼ばれるものがあります。
 代表的なものとしては技術・人文知識・国際業務や企業内転勤等が挙げられますが、これらの就労系在留資格には就労制限があります。
 例えば、技術・人文知識・国際業務の方は高度な知識・技術を用いて行うホワイトカラー(ホワイトカラー以外にも技術・人文知識・国際業務に該当する仕事はあります。)
 の仕事が対象となっており、工場でのライン作業やレストランで料理を作ったり、ホールスタッフとして働いたりすると言った現場作業や単純作業を行うことは認められていません。
 このような事情があるが故、転職する側も、受け入れる側もお互いに注意が必要です。
外国人が退職した際に会社がすべきこと
▼ 基本的に日本人の退職時と同様
基本的には、日本人が退職した際と同様です。
 健康保険の保険証の回収、離職票の交付、源泉徴収票の交付などです。
しかし、一点注意して頂きたい事があります。
 入管法19条の17の定められている入国管理局への届出です(努力義務)。
 これに関しては、ハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届の届出を行う事で、入国管理局への届出が不要となります。
中途採用した場合に必要な手続き
▼ 受け入れ時の注意点
最初に絶対に行わなければならないのが、在留カードのチェックです。
 そもそも就労可能なビザなのか、期限は切れていないのか等確認を行ってください。
 また、可能であれば入国管理局のウェブサイトにもある在留カードのチェックツールを使用し、適正に発行された在留カードであることも確認し、その画面を保存しておいてください。
近年は偽造在留カードが多く出回っております。
 全く確認せずに採用するリスクはとても高いです。
 もし仮に見過ごしてしまうと不法就労となり、企業は罰せられる可能性があります。
 勿論、偽造在留カードは本物を基に作られているので見破るのは難しいですが、企業としてやるべきことをやっている記録を残すのは重要です。
次に、会社が転職者に行ってもらいたい業務内容が、その転職者の持つ在留資格で行ってよいものかどうかを確認してください。
 上述した通り、いわゆる“就労系ビザ”では、行わせてはいけない業務が存在します。
 もしこの点でご不安な場合は、一度ご相談ください。
また、忘れてはいけないのが雇い入れ時のハローワークへの届出です。
 「外国人雇用状況の届出」は義務化されています。
▼ 資格該当性
在留資格を考えるスタートラインとして“資格該当性”というものがあります。
 これは、その外国人が日本で活動しようとしている内容が、在留資格として存在しているかどうかという考え方です。
 中途採用で考えると、例えばレストランで調理師として働いてもらいたいのに、雇いたい人が“技術・人文知識・国際業務”の在留資格を持っていた場合です。
 この場合、調理等を行うための在留資格は“技能”若しくは”特定技能”というものであるため、資格該当性に不一致が起きていると言えます。
所属機関等に関する届出
▼ 転職後にする必要がある手続き
外国人従業員は離職後または転職後14日以内に、入管に対し契約機関等に関する届出を行う必要があります。
 仮に14日以内を過ぎてしまったとしても必ず入管に対し提出してください。
 もし届出をしない、もしくは虚偽の届出をすると、入管法71条3もしくは2に抵触します。
 また、次回更新時に追加で提出を求められる、もしくは許可が出ないなんてこともあり得ます。
なお、この手続きは基本的に外国人本人が行いますが、あまり知られておらず、簡単な手続きなのにやらない方がとても多いです。
 是非企業主体で届出を行ってください。
転職後のビザ更新
▼ 就労資格証明書
よく外国人の方から相談される内容として、『この会社に転職を考えているのですが、この会社でビザの更新ができますか?』と言うものがあります。
 その方の持つ在留資格と、学歴・経歴、仕事内容等からある程度推測はできますが、この質問に対し明確な答えを出すことはできません。
 そのような時取れる手段として、“就労資格証明書”というものがあります。
 この就労資格証明書の交付を受けておけば、あらかじめ在留資格に該当する業務であるかどうかを審査することができるため、在留期間更新の際不許可となるリスクを回避でき、スムーズに更新手続きを行う事が可能です。
雇用者側としては安心して雇用する事ができ、また働く側としてもビザの心配をせず安心して働くことができ、雇用の安定を期待することもできます。
 雇用者側としては不法就労の防止と、早期離職の予防、二つの効果が見込まれますので行っておいた方が良い手続きであるかと思います。
ビザ(在留資格)ごとの転職時の手続
▼ 技術・人文知識・国際業務
残りの在留期限が1年以上ある場合などは、就労資格証明書の申請をしておくのがおススメです。
 長い在留期間が残っていればこそ、上記お話したメリットが活きてくるからです。
 もし、残り数か月しかない場合は、そのままビザ更新の手続きを行います。
 ただ、注意いただきたい事として、変更や認定の手続きをした会社におけるビザ更新ではなく、別の会社でのビザ更新という事です。
 そのことから、必要な書類、手続きなどは変更、認定の手続きとほぼ変わりません。
 会社の登記簿謄本や、決算書、業務内容の説明等様々な書類が必要になります。
▼ 特定活動(46号)
少し珍しい在留資格に特定活動46号と呼ばれるものがあります。
 通称“接客ビザ”とも呼ばれます。
 日本の大学を卒業し、かつ日本語能力試験でN1に合格していないと申請ができません。
 しかし、ハードルが高いからこそ就労できる業務内容は幅広く、日本語を日常的に使う仕事であれば基本的に従事することが可能です。
 この在留資格で転職しようとした場合、改めて変更の申請が必要となります。
 理由としては、この在留資格ではパスポートに“指定書”という紙が貼られ、そこで就労先の企業が指定されているからです。
▼ 特定技能
最近徐々に受け入れが広がっている特定技能ですが、勿論この在留資格も転職が可能です。
 ただご注意いただく点として、この在留資格では就労できる分野が限られており、他分野への転職をしたい場合、その分野の試験に合格する必要があることです。
 また、同分野であっても転職の場合は変更の手続きが必要となります。
まとめ
今回は、雇用時や離職時の手続きから、在留資格毎に異なる転職後の更新手続きなどについてお話してきました。
 雇用者側にも労働者側にも必要な手続きがありますので、漏れのないようにしましょう。
 また、転職後のビザ更新等に関しては、不安な点も多いかと思います。
 少しでも疑問などあれば、お気軽にお問合せください。
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