このコラムでは、「特定技能外国人の待遇や労働条件、労働環境はどうするべき?」という疑問に答えるため、ビザ申請のプロである行政書士が「特定技能雇用契約」について、わかりやすくお答えします。
1.雇用契約時に盛り込むべき内容とは
▼ 特定技能雇用契約とは
現在、人材不足であると考えられる特定技能14の分野について、在留資格「特定技能1号」が創設され、この特定技能1号を持つ外国人には、これまでの就労ビザでは認められなかった現場の仕事を含む業務に従事することが認められました。
この新しい在留資格(ビザ)である特定技能を有する外国人を雇用する企業は、入管法関連の法令、労働関係法令、社会保険関係法令、租税関係法令を遵守すると共に、特定技能ビザを持つ外国人の日本での活動を安定的かつ円滑なものにする責務があります。
この責務の顕れとして、特定技能ビザの申請をする際に、企業が特定技能ビザの申請をする外国人と締結する、労働上の条件や待遇・労働時間や労働環境などを定めた契約が「特定技能雇用契約」です。
では、この「特定技能雇用契約」とはどういう内容を備えているべきなのでしょうか?行政書士がわかりやすく説明していきます。
2.特定技能雇用契約の内容とは
▼ 報酬、労働時間、休日、休憩時間の考え方
特定技能雇用契約の内容として、特定技能外国人が従事する業務の内容、これに対する報酬、その他の雇用関係に関する事項の他、契約期間が満了した外国人の出国を確保するための措置、外国人の適正な在留に資するために必要な事項が定められている必要があります。
また、外国人であることを理由として報酬・教育訓練・福利厚生施設の利用その他の待遇、労働条件について差別的な取り扱いがなされていないことも必要となります。
- 【報酬(給与・賞与・手当・退職金)】
- 雇用契約上、特定技能外国人に支払われる報酬額は日本人が従事する場合の額と同等以上であることが求められます(賞与、手当、退職金を含みます。この点につき、会社の就業規則や賃金規定も参照されます)。
特定技能外国人の労働時間・休日・休憩時間の待遇、労働条件は、雇用する企業におけるフルタイムの従業員と同等であることが求められます(ここでいうフルタイムとは、原則として、労働日数が週に5日以上かつ年間217日以上であり、かつ、週の労働時間が30時間以上であることを指します)。
- 【労働時間】
- 労働時間は原則として1日に8時間、1週間に40時間以内となります。
- 【休日】
- 休日は原則として毎週少なくとも1回付与(法定休日)し、それ以外の休日は「所定休日」になります。
- 【休憩時間】
- 休憩時間については、勤務時間が6時間を超える場合には最低45分、8時間を超える場合は最低1時間となります。
この労働時間・休日・休憩については「雇用条件書」という書類に記載するのですが、雇用条件書は特定技能ビザを申請する外国人が十分に理解できる言語で作成し、外国人が内容を十分に理解した上で署名する必要があります。雇用契約の内容を十分に理解しないまま契約を進めることはトラブルのもとになりますので、企業の採用や労務の担当者は注意が必要です。
▼ 各種手当(時間外、深夜、休日)
時間外手当、深夜手当、休日手当などの各種手当についても、日本人の従業員に対する待遇と同様、残業をさせたり、深夜に働いてもらったり、休日に働いてもらう場合には、企業は割増賃金を支払う必要があります。
- 【割増賃金の例】
- ・残業(時間外労働)をする場合
⇒ 時給 × 残業時間数 × 1.25 - ・深夜に勤務する場合
⇒ 時給 × 残業時間数 × 1.25 - ・法定休日に勤務する場合
⇒ 時給 × 残業時間数 × 1.35
※月給制の場合、月給÷月平均所定労働時間で時給を算出します
- ・残業(時間外労働)をする場合
▼ 36(サブロク)協定
法律で決められた労働時間の限度である1日8時間・週40時間と、法律で定められた休日である週に1回以上の休日を超える労働時間を設定する場合や、変形労働時間制を採用している企業の場合には、36協定の締結及び労働基準監督署への届出が必要になります。
▼ 休業手当
日本人の従業員と同様に、会社側の都合によって特定技能外国人を休業させる場合には、平均賃金の6割を支払う必要があります、
ただし、台風や地震等の天災など休業の責任の所在が会社にない場合には不要となります。
▼ 有給休暇
有給休暇についても、日本人従業員と同様に、最低でも以下の有給休暇の日数を特定技能外国人に付与する必要があります。
勤務期間 | 有給休暇の日数 |
---|---|
6か月 | 10日 |
1年6か月 | 11日 |
2年6か月 | 12日 |
3年6か月 | 14日 |
4年6か月 | 16日 |
5年6か月 | 18日 |
以降1年経過ごとに | 20日 |
3 まとめとその他の留意点
最も重要な基準としては「特定技能外国人にも、日本の労働基準法をはじめとする労働法令等が適用される」ということをおさえておいてください。
その他、下記2点も重要となりますので注意しましょう。
- ・特定技能外国人に対する給与は、月給かつ銀行振込で支給する必要がある。
- ・特定技能外国人の雇用形態は、直接雇用のみ。
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