帰化申請の要件と養子縁組
帰化申請のご相談でよく寄せられる質問の一つに、「日本人の養子になれば帰化できるのですか?」というものがあります。 日本人の養子になることで日本との結びつきが身分的に認められて帰化が許可されやすくなり、日本国籍を取得できると考える方がいるのかもしれません。
外国人の方が日本人親と養子縁組をした場合に関係する帰化申請の要件としては、いわゆる住居要件(引き続き5年以上日本に住所を有すること)があります。 養子縁組をして住居要件の緩和を受けることができる場合には、5年以上ではなく、1年以上日本に住所を有していれば住居要件を満たすことになります。
では、どのような場合の養子縁組であれば帰化申請の住居要件の緩和を受けることができ、日本国籍の取得にむけて帰化申請を有利に進められるのか、養子縁組制度の概要と種類の説明と併せてさせていただきます。
1.国際養子縁組
外国人の子どもと養子縁組をして日本人が日本で養親となる場合の養子縁組は、日本法によって成立し、手続きがされます。 なお、養子となる外国人の国の法律で養子縁組のために本人、実父母の承諾・同意、裁判所等の機関の決定・許可等を必要とされている場合にはそれらも必要になります。
2.養子縁組の種類
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組があります。
▼ 普通養子縁組
普通養子縁組は、養子と実親との親子関係を存続させたまま、養子と養親との親子関係を作るものです。養子の戸籍上の記載は「養子/養女」とされます。
- 【普通養子縁組が認められるための要件】
- 養親となる者が成人であること
- 養子が養親の尊属又は年長者ではないこと
- 結婚している人が未成年者を養子にする場合には、夫婦共に養親となること
- 養親又は養子となる人が結婚している場合には、配偶者の同意があること
- 養子となる者が15歳未満の場合、親権者等の法定代理人の承諾があること
- 養子となる者が未成年の場合、家庭裁判所の許可があること(養子となる者が自分又は配偶者の実子である場合には当該許可は不要)
そして、普通養子縁組は、市区町村長に対する届出をすることにより成立します。
▼ 特別養子縁組
特別養子縁組は、生みの親との親子関係を断ち、養親となる育ての親と新たな親子関係を結ぶ養子縁組です。養子の戸籍上の記載は「長男/長女」とされます。
生みの親との親子関係を断つため、特別養子縁組が認められるための要件は普通養子縁組よりも厳しくなっています。
- 【特別養子縁組の要件】
- 実親の同意があること
- 養親となる者は25歳以上であり、かつ、結婚していること(養親となる夫婦の一方が25歳である場合、もう一方は20歳以上であればよい)
- 養子となる者が家庭裁判所に審判請求するときに原則15歳未満であること(養子となる者を15歳に達する前から養親となる者に監護されていた場合には、養子となる者が18歳に達するまでは審判の請求ができる)
- 養親となる者が養子となる者を6か月以上監護していること
- 家庭裁判所の決定を受けること
3.養子縁組をすると帰化しやすくなる?
では、帰化申請を有利に進めることができる養子縁組とは、どのような場合でしょうか。
▼ 未成年者が養子縁組をした場合
養子縁組の際に、養子となる者が「未成年」である場合にはこの場合にあたる可能性があります。
ここでいう「未成年」とは、養子となる者の国の法律上未成年である者を指します。
養子縁組の際に養子となる者が本国の法律上未成年であり、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有していれば、帰化が認められ、日本国籍を取得できる可能性があります。
▼ 成人してから養子縁組をした場合
成人をしてから養子縁組をした場合には、帰化申請について有利な措置はとられません。また、在留資格(ビザ)に関しても優遇措置はとられません。
これは、養子縁組制度を利用した不法入国や不法滞在を防ぐためです。
4.養子縁組をしても帰化が認められないケースとは
養子縁組をしても帰化申請が認められない場合として、下記のようなものがあります。
- 【養子縁組をしても帰化申請が認められないケース】
- 養子が養子縁組時に未成年ではない場合
- 養子が引き続き1年以上日本に住所を有していない場合
- 他の帰化申請の要件を満たしていない場合
5.まとめ
以上、養子縁組と帰化申請について説明させていただきました。
養子縁組をして帰化申請(日本国籍の取得)が有利になる場合としては、「養子縁組のときに養子になる者が未成年であり、かつ、引き続き1年以上日本に住所を有している場合」ということになります。
帰化申請に関してのご質問や、帰化申請をするにあたってご心配な点はぜひ、行政書士法人Climbにご相談ください。