目次
1. 経営管理ビザとは?申請の全体像を理解しよう
1.1 経営管理ビザの概要
経営管理ビザは、日本で事業を立ち上げたり運営したりするために必要な在留資格です。正式には「経営・管理」という在留資格に該当し、日本国内で会社を設立したり、既存の会社を管理・運営したりする外国人に発給されます。
このビザがあると、日本で法人の代表として働くことが可能になります。
他の就労ビザとは異なり、自らが事業の主体となって経営する点が大きな特徴です。たとえば技術・人文知識・国際業務ビザなどは、雇用される立場の人向けですが、経営管理ビザは雇用する側、つまり社長や経営者のためのビザです。
主な特徴をまとめると、以下のようになります。
- ● 外国人が日本で会社を設立・運営する際に必要な在留資格
- ● 一定額(通常500万円以上)の資本金が求められる
- ● 実体のあるオフィスを用意する必要がある(バーチャルオフィスや自宅不可)
- ● 家族を帯同するための「家族滞在ビザ」の申請も可能
特に最近では、飲食業や小売業、越境ECなど、多様な分野で外国人起業家が増えており、経営管理ビザのニーズも年々高まっています。
ただし、取得にはいくつかのハードルがあります。資本金の金額、事務所の確保、事業計画の実現可能性など、入管による厳しい審査が行われます。そのため、計画的な準備が欠かせません。
1.2 取得の流れを把握するメリット
「ビザ申請は最後でいい」と考えている方も多いですが、実は最初の段階から全体の流れを理解しておくことがとても大事です。
経営管理ビザは、ただ申請書を提出すれば良いというものではなく、会社設立や資金調達、事務所の契約といった複数の手続きが複雑に絡み合っています。そのため、順番やタイミングを間違えると、次のようなトラブルに繋がることもあります。
たとえばこんな失敗が多いです:
- 1. 事務所を契約する前に法人設立を進めてしまい、要件を満たさず却下される
- 2. 事業計画書に具体性がなく、審査で不許可となる
- 3. 資本金の入金時期がずれて、書類の整合性が取れない
こうしたリスクを避けるには、ステップごとの流れをしっかり把握し、いつ何を準備するかを逆算しておくことが不可欠です。
また、流れを理解することで得られるメリットも多くあります。
- ● 書類準備の無駄を減らせる(必要な書類が明確になる)
- ● スケジュール管理がしやすくなる(特に審査期間を考慮できる)
- ● 自力でできる範囲と専門家に頼むべき範囲が判断しやすくなる
たとえば「忙しい中で店舗の内装工事も進んでいて、書類準備まで手が回らない…」という場合でも、あらかじめ流れを把握していれば、効率よく準備を進められます。
結果として、申請から許可までの期間を短縮し、スムーズに事業スタートができる可能性が高まります。
2. 経営管理ビザ申請の流れ【ステップ別】
2.1 ステップ①:事業計画の策定と準備
経営管理ビザの申請において、最初に取り組むべきなのが「事業計画」の策定です。ただアイデアを並べるのではなく、実現可能性のあるビジネスプランを作る必要があります。
特に重視されるのが以下のポイントです。
- ● 誰に何を提供するのか(市場・顧客ターゲット)
- ● どうやって収益を上げるのか(ビジネスモデル)
- ● どれくらいの売上・利益を見込むのか(財務計画)
この段階でしっかり計画を立てておくと、後の法人設立や資金調達、審査の場面でもスムーズです。
「具体的で根拠ある事業計画」は、審査を突破するための土台です。
よくある失敗としては、
- 1. 市場調査せずに曖昧な需要見込みを書く
- 2. 初年度から過大な利益予想を立てて現実味を失う
- 3. 日本語の表現が不明瞭で審査官に伝わらない
といったケースがあります。必要に応じて、専門家のアドバイスを受けながら進めるのがおすすめです。
2.2 ステップ②:事務所(オフィス)の契約
次のステップでは、実体のある事務所(または店舗)を契約する必要があります。経営管理ビザでは、オフィスの実在性が重要視されており、バーチャルオフィスや自宅兼用では認められないことがほとんどです。
必要な条件は次の通りです。
- ● 物理的に独立したスペースであること
- ● 契約期間が申請時点で有効であること
- ● 使用目的が「事務所」「店舗」など、事業用になっていること
提出が必要な書類には、以下のようなものがあります。
- ● 賃貸借契約書(契約者が法人または申請者個人)
- ● 内外観の写真(机や椅子、備品が写っているもの)
このステップを飛ばして法人登記を行うと、不許可の可能性が高くなります。
よくあるミスは、
- 1. 自宅の一室を「オフィス」として使おうとする
- 2. 使用目的が住居用のまま契約してしまう
- 3. 実際に使っていないオフィスを形式上だけ契約する
このような場合、入管で「実体性がない」と判断される可能性があるため要注意です。
2.3 ステップ③:会社設立と登記手続き
オフィスの契約が済んだら、いよいよ法人設立に進みます。日本で事業を行うには、株式会社または合同会社などの法人を登記する必要があります。
一般的な流れは以下の通りです。
- 1. 定款の作成・認証(株式会社の場合は公証役場で認証が必要)
- 2. 資本金の払い込み(法人名義ではなく、設立者の口座へ一時的に入金)
- 3. 法務局で登記申請
登記が完了すると、「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)」や「法人番号通知書」などが発行され、正式に会社が設立されたことになります。
登記内容と申請書類の整合性が、審査で厳しくチェックされます。
よくある注意点は次の通りです。
- ● 役員の住所にミスがあると再提出になる
- ● 記載の資本金と証明書類の金額が一致していない
- ● 登記前に事務所契約を済ませていない
このステップでは、細かな記載ミスが後に響くので慎重に対応しましょう。
2.4 ステップ④:必要書類の準備
法人設立が終わったら、ビザ申請のための必要書類を一つ一つ揃えていきます。ここがもっとも時間と手間がかかるステップかもしれません。
主な書類は以下の通りです。
- ● 在留資格認定証明書交付申請書
- ● 事業計画書
- ● 定款の写し
- ● 登記事項証明書
- ● 法人名義の賃貸借契約書
- ● 資本金の振込が確認できる通帳コピー
加えて、申請者の履歴書やパスポートのコピー、過去の在留履歴なども必要です。
書類の不備や記載漏れがあると、審査が止まってしまいます。
特に多いのが、以下のようなミスです。
- 1. 事業計画書が抽象的で根拠に乏しい
- 2. 書類の提出順や名称がバラバラ
- 3. 翻訳が不正確で内容が誤解される
審査官が一目で理解できるよう、論理的に整理された資料が必要です。
2.5 ステップ⑤:入管への申請(在留資格認定証明書交付申請)
書類が揃ったら、出入国在留管理局に「在留資格認定証明書」の交付申請を行います。この申請は、事業を行う地域を管轄する入管に提出します。
審査機関は通常1~2ヶ月程度ですが、混雑状況によってはそれ以上かかることもあります。
この期間にやるべきことは以下の通りです。
- ● 書類の不備に備えてすぐに対応できる準備
- ● 事業の準備(備品購入、仕入れ、マーケティング準備など)
よくある誤解が「この時点でオープンできる」と思ってしまうことですが、許可が下りるまでは正式に営業開始はできません。
また、審査中に虚偽の情報が発覚した場合は不許可となる可能性があります。入管への提出情報はすべて一貫性が必要です。
2.6 ステップ⑥:認定証明書の取得後にビザ申請
認定証明書が発行されたら、いよいよ在留資格の取得に進みます。ここでの手続きは、申請者が「海外にいるか」「日本にいるか」によって異なります。
- ● 海外在住者:日本大使館・領事館で「査証(ビザ)」を申請し、来日
- ● 日本在住者:出入国在留管理局で「在留資格変更許可申請」を提出
どちらの場合も、認定証明書は有効期限が3ヶ月であるため、その間に渡航または変更申請を行う必要があります。
ここまでが、経営管理ビザを取得するための一連の流れです。
なお、来日後に銀行口座開設や社会保険加入、税務署への届け出なども必要となります。ビザ取得がゴールではなく、事業の本格始動に向けてさらに多くのステップが続く点も意識しておきましょう。
3. 申請後の注意点と更新までの流れ
3.1 審査で重視されるポイント
経営管理ビザの申請では、必要な書類を揃えるだけでは不十分です。入管は単なる形式だけでなく、「その事業が本当に継続できるかどうか」を重視して審査を行います。
具体的にみられるポイントは次の3つです。
- 1. 事業計画の実現可能性
- 過度な売上見込みや、曖昧なビジネスモデルはマイナス評価につながります。市場調査の結果や、業種に合った現実的な数字が必要です。
- 2. 資金調達の妥当性
- 資本金500万円以上という条件は表面的な基準であり、その資金がどのように調達されたのか、返済義務のある借入でないかなどもチェックされます。
- 3. 生活基盤の安定性
- 申請者が生活できる収入を得られるかどうか、家族が同居する場合は扶養能力があるかどうかも評価されます。
入管は、書類だけでなく「事業の持続可能性と信頼性」を総合的に判断します。
よくある審査での失敗例は以下の通りです。
- ● 事業計画がテンプレート的で説得力がない
- ● 出資金の出どころに不透明な点がある
- ● 他のビザでの在留歴に問題がある(オーバーステイや虚偽申告など)
こうしたリスクを減らすためには、書類作成の段階から「審査官の視点」を意識することがとても大事です。
3.2 許可後の対応と更新までの流れ
無事にビザの許可が下りた後も、やるべきことはたくさんあります。多くの方が「許可されたら終わり」と思いがちですが、実はここからが事業の本格的なスタートです。
まず、許可後に行う主な対応は次の通りです。
- ● 税務署・年金事務所・社会保険の各種届出
- ● 会計帳簿の作成と記帳体制の整備
- ● 取引先との契約締結、営業活動の本格化
これらの対応を怠ると、次回の更新申請で「実態のない会社」と見なされるリスクがあります。
ビザの更新時には、事業の継続性と収支実績が厳しく確認されます。
特に更新では、以下の点がチェックされます。
- ● 過去1年間の売上・利益・従業員雇用状況
- ● 会計帳簿や契約書類の整合性
- ● 資本金が事業運営に使われているかどうか
更新は通常「1年ごと」に行われますが、順調に事業を継続していると、3年や5年といった長期の在留期間が認められる場合もあります。
逆に帳簿が曖昧だったり、売り上げがゼロだったりすると更新が難しくなり、不許可となるリスクもあります。
日々の記帳や契約管理をしっかり行い、「見せられる経営」を意識することが重要です。
4. 自分で申請する場合と専門家に依頼する場合の違い
4.1 自力申請の流れと注意点
経営管理ビザの申請は、自分で手続きを進めることも可能です。特に日本語がある程度できて、書類作成に慣れている方であれば、コストを抑えつつ申請できるというメリットがあります。
ただし、自力申請には時間・知識・手間の3つのハードルがあります。
おおまかな自力申請の流れは以下の通りです。
- 1. 事業計画書の作成(日本語で)
- 2. オフィスの契約と写真の準備
- 3. 会社の設立・登記
- 4. 書類一式の準備と確認
- 5. 入管への在留資格認定証明書交付申請
- 6. 認定後、ビザの申請または変更手続き
一見するとシンプルに見えるかもしれませんが、それぞれの工程で専門的な知識が求められます。
よくある自力申請の失敗例としては、
- 1. 書類の形式ミスや記入漏れで、審査が長引いたり却下されたりする
- 2. 事業計画書の内容が審査基準に達しておらず不許可になる
- 3. 登記や契約のタイミングを誤って整合性が取れなくなる
これらのミスは、最悪の場合「ビザ不許可」という結果に直結してしまいます。
自力申請は費用がかからない一方で、失敗時のリスクが大きいのが特徴です。
忙しい中で一つずつ調べながら進めるのは、時間的にも精神的にも負担が大きく、途中で断念する方も少なくありません。
4.2 行政書士に依頼する場合の流れ
一方、ビザ申請に慣れた行政書士などの専門家に依頼することで、申請までの流れをスムーズかつ確実に進められます。
行政書士に依頼した場合の主な流れは以下の通りです。
- 1. 初回相談・ヒアリング(事業内容、背景、目的の確認)
- 2. 必要書類の案内と収集サポート
- 3. 事業計画書・定款・各種資料の作成
- 4. 入管への申請手続き代行
- 5. 審査中のフォローと追加資料対応
- 6. 認定証明書取得後のビザ申請または変更手続きまで支援
特に心強いのは、入管が何を重視しているかを熟知している点です。
審査官に伝わる事業計画の書き方、資本金の見せ方、オフィス写真の撮影ポイントまで、細かな部分もアドバイスしてもらえます。
専門家に依頼するメリットは次のような点です。
- ● 書類作成の手間を大幅に削減できる
- ● 書類の整合性や不備を防げる
- ● 審査に通る確率が上がる
一方で、費用は平均で20~30万円前後が目安です。これは単なる手数料ではなく、「成功率を高め、申請の時間を買う費用」と捉えると納得しやすいかもしれません。
時間や不安を減らしたい人にとっては、専門家への依頼が非常に有効です。
特に、開業準備やオフィス契約、スタッフ採用など多忙な状況にある方ほど、プロに任せることで本来やるべき業務に集中できるというメリットがあります。
5. よくある質問と不安の解消ポイント
5.1 事業開始前でもビザは取得できるのか?
「まだお店も始まっていないし、商品も売れていないけど、申請して大丈夫?」
こんな不安を感じる方は少なくありません。
結論から言うと、事業開始前でも経営管理ビザの取得は可能です。
実際、入管は「すでに営業しているかどうか」ではなく、「これから事業を開始できる状態にあるか」を重視します。つまり、申請時点で以下の条件を満たしていればOKです。
- ● オフィスや店舗を契約済みで、内装が整っている
- ● 会社が設立され、登記が完了している
- ● 資本金が法人名義の口座に入っている
- ● 実現可能性のある事業計画が整っている
「スタートできる準備が整っている状態」を証明できれば、事業が未稼働でも問題ありません。
ただし、内装が未完成だったり、備品が全く入っていない状態だと「まだ実体がない」と判断されるリスクがあります。事務所の写真や契約書など、実在性を裏付ける資料をきちんと揃えることが大切です。
5.2 資本金500万円未満でも申請可能?
経営管理ビザの取得要件としてよく言われるのが「資本金500万円以上」という基準ですが、「500万円に少し足りないけど申請できないの?」という質問もよくあります。
原則として、資本金500万円以上が必要です。
これは入管が明示している基準であり、起業者が安定的に事業を開始・継続できるかどうかを見るための指標です。
ただし、例外的に500万円未満で許可された事例も過去には存在します。その場合、次のような条件をクリアしていることが前提となります。
- ● 既に複数の日本人スタッフを雇用している
- ● 明確な収益見込みがある契約書類が存在する
- ● 自己資金でなくても明確な出資元が示されている
しかし、500万円を下回る申請はリスクが非常に高いため、基本的には500万円以上を確保するのが無難です。
足りない場合は親族からの贈与や第三者出資などを活用し、事前に資金調達計画を見直すことをおすすめします。
5.3 不許可となった場合の対応策は?
一番避けたいのが「申請が不許可になった」というケースです。
ですが、不許可となっても再チャレンジは可能です。
まず重要なのは、「なぜ不許可になったのか」を把握することです。入管からは通常、不許可理由が書面で交付されるため、これをもとに改善点を洗い出します。
よくある不許可理由は次の通りです。
- ● 書類に記載ミスや不備があった
- ● 資本金や事業計画に具体性が欠けていた
- ● オフィスの実態が不十分と判断された
- ● 在留履歴に問題があった(過去のオーバーステイなど)
対応策としては、次のような手順が考えられます。
- 1. 不許可理由を精査し、専門家に相談する
- 2. 書類を見直し、不足情報や証拠を追加する
- 3. 状況を改善した上で、再申請する(数ヶ月後が望ましい)
再申請時は、前回と同じミスをしないように書類内容を大幅に修正することが重要です。
特に初回申請を自力で行い、不許可になった場合は、2回目以降は行政書士に依頼することで成功率が大きく変わることもあります。
6. まとめ:経営管理ビザ取得の流れは計画的な準備がカギ
6.1 ステップを理解し、無理のないスケジュールを組もう
ここまで見てきたように、経営管理ビザの取得には複数のステップがあり、それぞれに明確なルールや審査基準があります。
思いつきで進めるのではなく、事前に「全体の流れ」を理解した上で計画を立てることが成功の近道です。
たとえば以下のようなスケジュールを組むと、スムーズに準備が進められます。
- ● 1ヶ月目:事業計画の策定と資金準備
- ● 2ヶ月目:事務所の契約と法人設立
- ● 3ヶ月目:必要書類の収集と入管申請
- ● 4〜5ヶ月目:認定証明書の取得とビザ申請
このように、ステップごとに期間を分けて進めることで、余裕を持って準備ができます。
途中で不明点や手続きの複雑さに戸惑うこともあるかもしれませんが、「今どのステージにいるのか」を明確にするだけで不安がかなり軽くなります。
特に、書類提出の前後はスケジュールがタイトになりがちなので、早めの準備と情報収集がカギになります。
6.2 不安がある場合は専門家に早めに相談しよう
「全部自分でやるのはちょっと大変かも…」
そう感じたら、早めに専門家に相談するのがおすすめです。
行政書士などのビザ申請のプロに相談すれば、あなたの事業内容に合わせた最適な進め方をアドバイスしてもらえます。特に以下のような方には、早期相談が効果的です。
- ● ビザ申請が初めてで流れがよく分からない
- ● すでに法人設立や店舗準備が始まっている
- ● 書類作成や日本語表現に自信がない
専門家は「どの順番で進めれば審査に通りやすいか」「審査官がどこを見るか」を熟知しているため、申請成功の可能性が高まります。
また、無駄なやり直しを防ぐことで、時間とコストの両方を節約することにもつながります。
ビザの取得は、あなたの新しい人生のスタート地点です。無理せず、確実な方法で一歩を踏み出しましょう。
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