永住権の申請について調べていると、「年収300万円が必要」という情報をあちこちで目にする方もいるのではないでしょうか?
一方で、それが本当に公式な基準なのか、それとも噂の域を出ないものなのかがわからず、不安を感じている方も多いかと思います。
さらに、自分の年収だけでなく、実際には扶養家族の人数や収入の安定性など、金額以外にも見られているポイントがあるのではという疑問も拭えません。
そこで本記事では、「永住権申請に必要な年収の目安」について解説します。「年収300万円という基準の実態」や「扶養家族数ごとの目安」、「年収を証明する書類」、「年収が基準に満たない場合の対処法」にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
永住権申請に「年収300万円」は本当か
永住権申請について調べていると、よく目にするのが「年収300万円」です。本当に必要なのかどうか、まずは以下にわけて詳しく解説します。
- ● 法令上の明確な基準は存在しない
- ● 実務上の目安が「300万円~」とされる理由
法令上の明確な基準は存在しない
結論から言えば、年収に関して法令上の明確な基準は存在していません。実際、出入国在留管理庁も、一律の最低年収として300万円を公表していない点から見ても明らかです。
永住許可のガイドラインには「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」という抽象的な記載があるのみで、具体的な金額基準は法令上どこにも明記されていません。
つまり「300万円」という数字は、公式な合格ラインではなく、あくまで実務上の目安として語られているものだということを最初に理解しておく必要があります。
実務上の目安が「300万円~」とされる理由
法令上の基準がないにもかかわらず「年収300万円前後」という数字が広く語られているのは、行政書士事務所の審査実務の蓄積によるものです。
就労系の在留資格から永住を申請する方について、これまでの許可・不許可の実例を見ていくと、年収300万円前後を1つの目安として確認することが多いと、経験則から共有している形になります。
そのため、注意したいのが、年収300万円以上であれば必ず許可されるわけではないという点です。実際は、300万円未満でも、他の要素で安定性を示せれば許可されるケースがあります。
金額はあくまで「最低限の生活が可能かどうか」を判断する1つの参考ラインに過ぎないと認識しておきましょう。
年収の審査で見られるポイント
永住権申請では年収に関して定まった基準はないものの、チェックされる項目には違いありません。では、どのような点を審査で見られるのか、以下のケースにわけて詳しく解説します。
- ● 安定した収入・継続性が重視される
- ● 扶養家族がいる場合の目安(家族数ごとの早見表)
- ● 自営業者・フリーランスの場合
安定した収入・継続性が重視される
永住権の審査では、現在の年収の金額だけを機械的に見て判断するのではなく、収入の継続性や雇用・事業の安定性が重視されます。
例えば、就労ビザから永住を目指す場合、直近5年分の所得が確認されることが一般的です。この場合、年によって多少の収入の波があったとしても、平均して安定した水準を保てているかが評価されます。
一方で、単年度だけ高い年収があっても、それ以前の年収が不安定であったり、直近で大きく落ち込んでいたりする場合は、生活の安定性についてより慎重に確認される可能性があります。
扶養家族がいる場合の目安(家族数ごとの早見表)
年収の評価は、扶養家族の人数によって大きく変わります。一般的に、扶養人数が増えるほど生活に必要な費用も増えるため、同じ年収でも審査は厳しくなる傾向があります。目安としては、以下のとおりです。
| 家族構成 | 年収の目安 |
|---|---|
| 単身者 | 300万円前後 |
| 配偶者あり(扶養1人) | 350万~400万円程度 |
| 配偶者+子ども(扶養2人以上) | 400万~500万円以上 |
上記はあくまでも実務上の目安なので、注意してください。実際は、「地域の物価水準」「世帯全体の資産状況」「配偶者の収入」なども合わせて総合的に判断されます。
そのため、本人の年収がこの目安に届かない場合でも、夫婦や家族の合算収入で生活の安定性を示せれば問題ないケースもあります。
自営業者・フリーランスの場合
自営業者やフリーランスの場合、会社員のように毎月安定した給与が支払われる仕組みではないため、収入の変動が大きいと「安定した生計」を示しにくいという特有の注意点があります。
そうした点から、以下の資料をもとに、会社員よりも詳細な審査が実施されます。
- ● 確定申告書の内容
- ● 過去数年分の所得の推移
- ● 事業の継続性を示す資料
もし、開業して間もない場合や赤字の年がある場合は、その理由や今後の見通しについて追加の説明資料を用意しておくと良いでしょう。
年収を証明する書類
永住権申請では、年収を証明する書類を求められます。どのような書類が必要なのか、以下のケースにわけてそれぞれ詳しく紹介します。
- ● 給与所得者の場合
- ● 自営業・会社役員の場合
- ● 住民税課税証明書・納税証明書の入手方法
給与所得者の場合
給与所得者が年収を証明する際に必要な主な書類は、以下のとおりです。
- ● 直近5年分の住民税の課税(または非課税)証明書及び納税証明書
- ● 職業を証明する資料(在職証明書等)
- ● 雇用契約書・給与明細書・源泉徴収票など直近の収入状況を説明する資料
転職して間もなく、その年の源泉徴収票がまだ発行されていない場合は、直近数ヶ月分の給与明細書で代替することもあります。
自営業・会社役員の場合
自営業者・会社役員の場合は、給与所得者とは異なる書類が必要です。以下の書類を準備しておきましょう。
- ● 確定申告書の控え
- ● 青色申告決算書または収支内訳書
- ● 法人の場合は決算報告書・登記事項証明書等
- ● 直近5年分の住民税の課税(または非課税)証明書及び納税証明書
個人事業主は源泉徴収票を発行してもらえる勤務先がないため、確定申告書の控えが所得証明の中心的な書類になります。
そのため、e-Taxなどを使って申請している場合は、確定申告書を印刷して残しておくのを忘れないようにしてください。
住民税課税証明書・納税証明書の入手方法
住民税の課税証明書・納税証明書は、居住している(していた)市区町村役場の窓口で取得できます。
出入国在留管理庁によると、直近5年分の課税証明書及び納税証明書(1年間の総所得及び納税状況が記載されたもの)を各1通提出する必要がありますが、両方の情報が1枚の証明書に記載されている場合はいずれか一方でかまいません。
もし、転居を繰り返している場合は、それぞれの市区町村で個別に取得する必要があるため、早めに準備を始めることをおすすめします。
一方の国税の納税証明書(その3)は税務署で取得でき、e-Taxによるオンライン請求も可能です。住民税課税証明書と比べると、出向く必要がない分、取得はしやすいでしょう。
なお国税に関しては、「源泉所得税」「申告所得税」「消費税」「相続税」「贈与税」の5税目すべてを対象とした証明書を請求する必要がある点には注意してください。
年収が基準に満たない場合の対処法
永住権申請を考えている方の中には、年収が基準と言われている「300万円」に満たない方もいるかと思います。そのような場合、以下の対処法も検討してみてください。
- ● 配偶者の収入を合算できるか
- ● 申請時期を見直す
配偶者の収入を合算できるか
本人の年収だけでは目安に届かない場合、配偶者の収入を合算できるかどうかを検討してみましょう。配偶者を含めた世帯全体の収入で生活の安定性を示せれば、許可される可能性があるためです。
審査では、「世帯全体の収入や資産」も含めて総合的に評価されます。そのため、共働きの夫婦であれば配偶者の収入・職業に関する資料(源泉徴収票・在職証明書等)も併せて提出することで、審査が通る可能性が高まります。
ただし、配偶者の収入合算だけに頼るのではなく、預貯金残高や資産状況も含めて生活の安定性を多角的に示せるかが重要な点には変わりありません。
申請時期を見直す
収入が一時的に落ち込んでいる場合や、転職直後で継続性を証明しにくい場合は、無理に今すぐ申請するのではなく、収入が安定してから申請時期を見直すのも有効な対処法です。
特に就労系の在留資格から永住を目指す場合、直近5年分の所得の推移が見られる傾向があるため、収入が上向いてから数年分の実績を積んで申請する方が、結果的に審査を通過しやすくなるケースがあります。
確実性を高めるためにも、焦って不利な状態のまま申請するよりも、準備を整えてから申請する選択も検討してみましょう。
よくある質問
- 転職直後でも申請できる?
- 申請自体は可能ですが、転職直後は収入の継続性を確認しにくいという点で審査上不利になる可能性があります。特に、新しい職場での収入実績がまだ短い場合、雇用の安定性が十分に示せないと判断されることがあるため、可能であれば一定期間(半年~1年程度)勤務を継続し、実績を積んでから申請することをおすすめします。
- 直近1年の年収と過去3年の年収、どちらが重視される?
- 一般的に、直近1年分だけでなく、過去数年分(実務上は直近5年分とされることが多い)の所得の推移が確認される傾向があります。単年度の年収が高くても、それ以前の年収が不安定であったり、大きな変動があったりするためです。そのような場合、収入の継続性という観点でより慎重に審査される可能性があります。
永住権の申請において、長期的に安定した収入を維持できているかどうかは重要なポイントなのです。
まとめ
永住権申請における「年収300万円」という数字は、出入国在留管理庁が公式に定めた法令上の基準ではなく、これまでの審査実務の蓄積から生まれた実務上の目安です。
実際の審査では、年収の金額だけでなく「収入の継続性」「扶養人数」「世帯全体の収入や資産」「納税や社会保険料の履行状況」などが総合的に評価されます。
扶養家族がいる場合は単身者よりも高い年収の目安が現実的なラインとされていますが、これも絶対的な基準ではありません。
年収が目安に満たない場合でも、配偶者の収入合算や申請時期の見直しによって対処できる可能性があるため、自分の状況を正確に整理したうえで、必要であれば行政書士など専門家への相談も検討してみましょう。