このコラムでは、帰化申請の際に必要とされる「素行条件」について、帰化申請のプロである行政書士がわかりやすくお答えします。
「素行条件」の「素行」とは何を意味するか?どの程度からが問題になるのか?
また、よくあるご質問「過去に前科があるのですが」「オーバーステイがあったのですが、許可されますか?」という心配についても解説します。
1.素行条件とは?
まずは帰化申請に必要とされる「素行条件」とは何かについてお話していきましょう。
外国人が日本国籍を取得するために行う帰化許可申請においては、様々な条件があります。
その条件の一つとして素行条件があり、国籍法第5条1項3号に定められています。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
(中略)
三 素行が善良であること。
国籍法第5条1項3号
上記の国籍法第5条1項3号が定める素行要件をクリアするには、前科や犯罪歴、破産歴がなく、税金や納税状況に問題がないことが重要です。
これらの素行条件を満たしていない場合に、「素行不良」となります。
▼ 素行不良とは
素行不良とは、法律違反があったり、納税義務を履行していない場合に主に認められます。
帰化申請をする方が素行要件を満たすかどうかは、主に以下の点で検討することができます。
- ・前科や犯罪歴があるかどうか
- ・不法残留(オーバーステイ)の履歴
- ・車等の運転で違反がないか(過去5年間の運転記録が必要になります)
- ・破産歴はないか
- ・納税義務を履行しているか
- ・年金の支払い状況
- ・民法上の不法行為の有無
- ・家族の素行
以上の面から総合的に審査されて判断されます。
2.「前科」や「オーバーステイ」について
ここからは、特にご質問の多い「前科」がある場合や「オーバーステイ」をしてしまった場合についてご説明していきます。
▼ 素行要件の中で「前科」はどのくらい影響する?
前科とは、刑事裁判で有罪の裁判を受けたことであり、刑事裁判が確定したら前科がつきます。
逮捕等はされたものの、実際に起訴をされなかった場合には刑事裁判にならないので、前科はつきません。
刑事裁判で実際に有罪の判決を言い渡され、前科がある場合には、帰化が許可される可能性は下がります。
ただし、前科があったとしても犯した犯罪の内容や、判決を受けてから経過した年月等の事情によっては、帰化の許可が下りる場合があります。
もしも前科がある場合には、嘘をつかないことはもちろんのこと、前科の内容について隠さず、正直に帰化申請の書類に記載します。
家族に前科がある場合も同様です。
なお、実刑の有罪判決を受け、刑務所に服役した場合には、目安として服役を終えてから10年以上が経過していれば帰化が許可される可能性があります。
執行猶予付きの有罪判決がある場合には、目安として執行猶予期間の約2倍の期間が経過していれば前科があっても帰化が許可される可能性があります。
前科ありでも許可の可能性があるケース(目安)
- 実刑の有罪判決を受け服役した場合
- ⇒服役から10年以上経過している
- 執行猶予つきの有罪判決
- ⇒執行猶予期間の2倍の期間が経過している
上記は、許可の「可能性がある」ケースであり、必ず許可になるわけではありませんので、注意してください。
また、隠さない・嘘をつかないことは鉄則です。
▼ 在留不良(オーバーステイ) はどのくらい問題になる?
在留期間が経過してしまっているのにビザの更新等をしないで日本に在留を続ける不法残留(オーバーステイ)が過去にあった場合には、素行条件の面で問題となります。
これもあくまで目安としてですが、オーバーステイをし、在留特別許可を得てから10年以上の期間が経過していれば帰化の許可がされる場合もあります。
過去にしたオーバーステイの経緯、反省していること、今後二度と法律違反はしないという内容の文章を作成することも一つの方法です。
家族がオーバーステイしてしまった場合も同様に申請時に説明をしておくほうが良いでしょう。
オーバーステイの理由書に盛り込む内容
- ・過去のオーバーステイの全履歴
- ・オーバーステイをしてしまった経緯
- ・どのように反省しているか
- ・今後は二度と法律違反をしない旨の宣誓
▼ 虚偽申請・隠し事をすると不許可の確率が上がる
これら「帰化申請において重要な素行条件」を満たすことができない事情が過去にあり、問題があって条件を十分満たせない場合でも帰化の申請をしたい場合には、事実を隠さず、虚偽の申請をしないことがとても大切です。
帰化のどの条件を満たしていないのか、条件を満たしていない場合でも申請したい場合に具体的にどのようなことが大事なのか、どういう説明をすればいいのか等について、不安があればプロの行政書士に依頼するのがいいかと思われます。
「帰化したいけど、自分は申請できるのかな?」「自分は条件を満たしているのかな?」など、心配事や相談がある方は、ぜひ一度行政書士法人Climbにご相談ください。