過去に犯罪をして罰せられたことがあり、前科がある場合、「帰化申請はできますか?」「不許可になってしまいますか?」などというご相談を受けることがあります。
結論から申し上げますと、帰化申請自体は可能です。しかし、前科・犯罪歴がある場合には、帰化申請の審査上不利に働くため、許可を得られる可能性は低いと考えていただいたほうがよいです。
本稿では、前科・犯罪歴がある場合の帰化申請について説明します。
1.前科・犯罪歴があると帰化できない?
▼ 帰化の条件とは
帰化申請が許可されるための条件は国籍法第5条に規定されています。
- ① 居住要件:引き続き5年以上日本に住所を有すること。
- ② 能力要件:20歳以上で本国法によって能力を有すること。
- ③ 素行要件:素行が善良であること。
- ④ 生計要件:自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
- ⑤ 国籍喪失要件:国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
- ⑥ 思想要件:暴力団関係者等でなく、日本国政府を暴力で破壊することを企てる等の思想を持っていないこと。
- ⑦ 日本語能力:(明文の規定はないものの)日本で生活できる十分な日本語能力があること。
▼ 前科・犯罪歴は帰化のどの条件に抵触する?
帰化許可申請が許可されるための要件の一つに、上記③の素行要件があります。
素行要件は、「素行が善良であること」という抽象的な表現で規定されていますが、前科・犯罪歴があることは、多くの場合に素行が善良でないと評価される事実があります。そのため、素行要件を満たすことができず、帰化申請が不許可になることが多いのです。
▼ 素行要件の審査項目
素行要件が審査される際の項目としては、下記のものが挙げられます。
- ・前科の有無、内容、犯罪歴
- ・破産歴
- ・交通事故、違反の有無、内容
- ・納税状況
- ・年金の支払い状況
- ・民法上の不法行為
- ・家族の素行
このように、素行要件の審査項目はいくつかあり、前科の有無や内容、犯罪歴も審査されるため、前科や犯罪歴がある場合には帰化申請が不許可になることが多いのです。
2.前科・犯罪歴があるが帰化申請をしたい場合、どうするべき?
「前科がある」といっても、その内容は様々です。実刑有罪判決を言い渡され刑務所に服役したという前科もあれば、執行猶予付きの有罪判決を言い渡され刑務所への服役等はしなかったという前科もあります。
前者の実刑有罪判決の場合には許可の可能性は低いですが、刑務所を出所してから10年以上経過してから帰化申請をすれば許可される可能性はあります。
また、後者の執行猶予付きの有罪判決の場合も不許可の可能性は高いですが、言い渡された執行猶予期間の約2倍の期間が経過してから帰化申請をすれば許可される可能性はあります。
前科・犯罪歴がある方が帰化申請をする場合には、次の点に気を付けることで許可される可能性は十分にあります。
- ① 刑の執行から相当年数が経過した後に申請すること
- ② 帰化申請の際、前科について隠さないこと
また、帰化の動機書の文中に、当時のことを反省していること、二度としないと誓うことなどを書くことを検討するとよいでしょう。
帰化申請に関してのご質問や、帰化申請をするにあたってご心配な点はぜひ、行政書士法人Climbにご相談ください。