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建設業の“特定技能”制度とJAC加入の完全ガイド:制度・手続き・費用・実務対策を一挙解説

建設業の“特定技能”制度とJAC加入の完全ガイド

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「特定技能外国人を採用したいけど、建設分野は制度が複雑すぎる」
「JAC(建設技能人材機構)という名前は聞くけれど、具体的に何をすればいいのかわからない」

このような悩みを抱いていませんか?建設業の特定技能制度では、他の業種とは違いJACへの加入が義務化されており、独自のルールが多数存在します。一方でJACへの加入手続きや義務を怠ってしまった場合、外国人材の受け入れ自体ができなくなったり、法令違反でペナルティを受けたりといったリスクがあります。

そこで本記事では「JACの役割」について詳しく解説します。「加入の手続き」や「費用」「実際に外国人を受け入れるための実務ポイント」も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

JACと特定技能制度の基本情報

建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業にとって、JAC(建設技能人材機構)は不可欠な存在です。まず、JACがどのような組織で、なぜ建設分野での受け入れに必須なのかという基本を以下にわけて詳しく見ていきましょう。

  • ● JAC(建設技能人材機構)の役割と設立背景
  • ● 建設分野における特定技能制度の位置づけ

JAC(建設技能人材機構)の役割と設立背景

JACは、特定技能外国人が日本の建設現場で適正に就労し、技能を向上させることを支援するために国土交通大臣の認可を受けて設立された組織です。

従来の建設業界は、多重下請け構造や技能者の高齢化・流動性の高さといった課題を抱えていました。そこで特定技能制度を導入するにあたり、他の産業とは異なり業界全体で統一された管理体制が必要と判断され、その担い手としてJACが設立されたのです。

こうした経緯から、JACの主な役割は、外国人材のキャリアアップ支援と、企業側の法令遵守を徹底させるための指導・監督が中心になります。

建設分野における特定技能制度の位置づけ

特定技能制度は、即戦力となる外国人材を受け入れ、日本の人手不足を解消するために創設された経緯があります。事実、建設分野は特に深刻な労働力不足に直面しています。そのため、特定技能は外国人材が長期的に日本の建設業で働き、人手不足を解消するとともにキャリアを積むための重要な在留資格と位置づけられています。

他の分野と大きく異なるのは、特定技能2号(熟練レベル)へ移行すると、在留期間の更新回数に上限がなくなり、家族滞在も可能になる点です。JACは、この2号への移行を促すための技能評価や教育訓練を担っているため、外国人材の定着と育成に不可欠な存在といえます。

JAC加入の必要性と手続きの流れ

JACへの加入は、建設業で特定技能外国人を受け入れるための必須条件です。加入しないと、出入国在留管理庁に特定技能の申請自体ができなくなります。以下にわけて詳しく見ていきましょう。

  • ● 加入が義務化されている理由
  • ● 加入方法(賛助会員と正会員の違い)
  • ● 入会申請のステップと必要書類

加入が義務化されている理由

建設分野でJACへの加入が義務付けられている最大の理由は、外国人材の適正な就労環境を確保し、業界全体で統一的なキャリアアップを管理するためです。

建設業では、現場ごとに労働環境や安全管理のレベルが異なるため、外国人材が不当な労働を強いられたり、スキルアップが阻害されたりするリスクがありました。そうした状況を改善するために、建設業界の団体や企業が立ち上がって設立した組織が、JACです。

そのためJACは、受け入れ企業が法令を遵守し、外国人材に適切な賃金や教育を提供しているかをチェックする機関として機能しており、業界全体の信頼性を維持しています。

加入方法(賛助会員と正会員の違い)

JACには、正会員と賛助会員の2種類の加入形態があります。特定技能外国人を受け入れる企業は、原則としてどちらかの方法で必ずJACに加入しなければなりません。まずは以下の違いについて知っておきましょう。

項目正会員賛助会員
対象建設業団体、関連企業特定技能外国人を受け入れる企業
役割制度の企画・運営への参加支援・受入計画の認定申請
義務あり特定技能の受入時に必要

既に正会員団体(2025年11月現在で58建設業者団体)に加入している場合は、正会員として外国人を受け入れられます。一方で正会員団体に加入していない場合は、賛助団体としての加入になります。

どちらの加入になるかは、企業の状況にもよりますので、まずは自社がどちらに該当するのかを確認しましょう。

入会申請のステップと必要書類

JACの賛助会員への入会手続きは、以下のステップで進めます。

  1. 1. JACの公式サイトから入会資料をダウンロードする
  2. 2. ダウンロードした資料を読み込んだ後、エントリーフォームから申し込み
  3. 3. ダウンロードした資料に同封されている資料に記入し、送付する
  4. 4. 入会審査を受ける
  5. 5. JACから承認を受けて会員証が発行される

審査は毎月25日(土日祝の場合は翌営業日)午前12時までの申込完了分が対象となり、翌月第2営業日に承認されます。そのため、タイミングによっては数週間程度かかるでしょう。

採用スケジュールに合わせて、早めに手続きを開始しておくと安心です。

JACが提供する主な機能とサポート

JACは、単に企業の管理・監督をするだけでなく、外国人材の定着と企業の負担軽減につながる様々なサポートを提供しています。どのようなサポートがあるのか、以下にわけて詳しく見ていきましょう。

  • ● 適正就労管理と巡回指導
  • ● 技能評価試験・教育訓練・制度説明会
  • ● 無料職業マッチングと再就職支援

適正就労管理と巡回指導

JACは、企業が提出する建設特定技能受入計画に基づいて、外国人材が法令通りに働いているかを定期的にチェックします。中でも適正就労管理として取り組んでいるのが、以下の2つです。

【巡回指導】
職員が企業や建設現場を直接訪問し、外国人材の就労環境、賃金、安全管理が適正に行われているかを確認します。
【相談窓口】
外国人からのハラスメントや契約違反に関する相談を受け付け、企業への指導や改善を促します。

これら2つの取り組みによって、企業側はトラブルを未然に防げ、安心して受け入れを続けられます。

技能評価試験・教育訓練・制度説明会

外国人材のキャリアアップと技能の証明に関する重要な機能もJACが担っています。主な方法として、以下の3つがあります。

  • ● 技能評価試験:特定技能1号を取得するための技能水準を測る試験(建設分野固有の試験)を実施・運営
  • ● 教育訓練:技能向上のための教育訓練プログラムを実施
  • ● 制度説明会:制度に関する最新情報を共有するための説明会を定期的に開催

制度は、知るだけでなく、現場で活かせるかが重要です。その意味でも、外国人をサポートするだけでなく、受入企業の悩みや不安を解決してくれる制度となっています。

無料職業マッチングと再就職支援

外国人材の採用や離職時のサポートも、JACの重要な機能です。以下のような支援があります。

  • ● マッチング
  • ● 再就職支援

マッチングは、その名の通りJACに登録している外国人材や技能実習を終了した人材と企業とを無料で紹介するサポートです。人材紹介サービスの特化型とイメージするとわかりやすいでしょう。

一方の再就職支援は、契約期間の終了や、やむを得ない企業の都合で離職した外国人材に対して、速やかに他の建設企業への再就職を支援するサポートです。

特定技能で働ける外国人を受け入れたい企業はもちろん、特定技能外国人として働きたい外国人や、特定技能外国人に転職先を探してあげたい企業も利用できます。手数料もかからないため、外国人と受入企業の双方にとって利用しやすいサポートとなっています。

JAC加入にかかる費用と負担金

JACへの加入は義務ですが、当然ながら費用が発生します。予算を正確に立てるためにも、費用の内訳を理解しておきましょう。

  • ● 年会費と受入負担金の体系
  • ● 一人あたりの月額負担の目安
  • ● 追加で発生する関連費用(CCUS登録など)

年会費と受入負担金の体系

JAC加入時に発生する主な費用は、以下の2種類です。

費用項目目的負担頻度
年会費JACの運営費、制度運用費年に1度(支払日前に通知あり)
受入負担金外国人材1人あたりの管理・支援費毎月

正会員・賛助会員ともに年会費がかかり、それぞれ費用が異なるため、支払前に確認しておきましょう。

一方の受入負担金は、毎月、1号特定技能外国人1人あたり12,500円の費用が発生します。年間で15万円です。原則として、1号特定技能外国人に負担させてはいけません。

一人あたりの月額負担の目安

年会費は企業全体の費用ですが、先述したように受入負担金は外国人材1人ごとに発生します。

例えば外国人を1人雇った場合、月に12,500円の受入負担金が発生します。年換算で15万円です。この金額には、JACによる巡回指導や再就職支援などのサポート費用が含まれています。そのため、特定技能外国人を受け入れるための総費用(人件費、登録支援機関への委託費、JAC負担金など)の一部として計画に組み込む必要があります。

追加で発生する関連費用(CCUS登録など)

JAC関連の費用以外にも、受け入れのために必須となる間接的な費用があります。中でも以下が代表的なものです。

  • ● CCUS(建設キャリアアップシステム)登録料
  • ● 特定技能に係る登録支援機関への委託費用
  • ● 日本語教育費用:外国人材に日本語教育を行う場合の教材費や教育機関の利用費

CCUSへの登録料の他、登録支援機関へ委託する場合は、JACの年会費とは別に委託費用が発生します。日本語教育の教材費や教育機関の利用費も必要になるでしょう。

特定技能の外国人を受け入れる際は、企業側が負担しなければいけないため、諸費用も含めて総合的に考慮し、トータルコストを把握しておくことが重要です。

特定技能外国人を受け入れる際の実務ポイント

JACへの加入手続きと並行して、外国人を受け入れるための実務的な準備も進める必要があります。中でも以下の3つは重要です。

  • ● 建設特定技能受入計画の認定要件
  • ● CCUS(建設キャリアアップシステム)登録の義務
  • ● 社内体制整備と導入準備の流れ

建設特定技能受入計画の認定要件

建設分野の特定技能申請で最も重要な書類の1つが、受入計画です。流れとして、出入国在留管理庁に提出する前に、JACの認定を受ける必要があります。

建設特定技能受入計画では、外国人材が従事する業務や賃金・労働条件に加え、JACが提供する支援内容を明確に記述しなければなりません。特に、以下の要件は重要です。

  • ● 日本人従業員と同等以上の報酬である
  • ● CCUSを活用して技能水準を把握している
  • ● キャリアアップを支援する体制がある

これらがあると、認定を受けるための要件を満たしやすくなります。提出前に必ず確認しましょう。

CCUS(建設キャリアアップシステム)登録の義務

建設分野の特定技能外国人を受け入れる企業は、原則としてCCUSに登録することが義務付けられています。JACが指導・管理する「適正就労管理」の根幹となるシステムであるためです。

CCUSは、外国人材の技能水準や就労実績を統一的に管理し、公正な評価と賃金へと結びつけるための仕組みでもあります。適正に雇用していると証明するためにも、企業と外国人材の両方のCCUS登録を完了させ、実際の就労実績を記録していかなければいけません。

社内体制整備と導入準備の流れ

外国人材を現場に迎える前に、社内の体制を万全に整えておくことも重要です。特に以下の点は意識しましょう。

  1. 1. 担当者を選任する
  2. 2. 就業規則を見直す
  3. 3. 現場教育を実施する

受入を決めたら、まずは外国人材の支援責任者と生活支援担当者を決め、役割を明確にしていきます。責任の所在を明らかにしましょう。その上で就業規則を見直し、外国語に対応した就業規則や賃金規定を整備します。

それらが整備できたら、外国人が実際に働く現場の日本人従業員に対して、異文化理解や特定技能制度に関する教育を実施し、受け入れ体制を整えます。

外国人と日本人、双方が働きやすい環境を構築できれば、外国人材がスムーズに職場に溶け込め、定着率を高められるでしょう。

JACに加入することで得られるメリット

JACへの加入は義務である一方、企業の持続的な人材確保に役立つメリットがあります。負担だけでなくどのようなメリットがあるのか、以下にわけて詳しく見ていきましょう。

  • ● 最新制度情報の入手とガイドライン提供
  • ● トラブル防止・相談窓口の活用
  • ● 定着支援・教育研修による安定した受入

最新制度情報の入手とガイドライン提供

JACに加入していると、最新の制度情報を入手しやすいメリットがあります。特に、特定技能制度のルールは改正が多いため、最新情報を正確に入手できるかどうかは外国人材を雇用する上で重要なポイントです。

また、JACの会員になることで、国土交通省や出入国在留管理庁のガイドラインや制度の最新改正情報を素早く正確に入手できます。古い情報に基づいた手続きのミスを防げ、企業の法令遵守をサポートしてくれるでしょう。

トラブル防止・相談窓口の活用

JACに加入すると、トラブル防止・相談窓口も活用できます。受入企業にとって、非常に頼もしい存在になってくれます。なぜなら、外国人材の受け入れに際して、予期せぬトラブルや疑問はつきものだからです。いざという時に頼れる相手がいると、安心感が大きく異なります。

また、相談窓口は労働時間や社会保険、技能評価など、制度に関する疑問や外国人材との間の文化的な摩擦、ハラスメントの相談などにも活用できます。トラブルが発生する前の予防的な指導を受けられるため不安を軽減でき、問題が深刻化するのを防げるでしょう。

定着支援・教育研修による安定した受入

JACに加入するメリットの1つに、外国人材のスキルアップとキャリア形成を支援する仕組みを活用できる点があります。これにより、外国人を安定して受け入れられるようになります。

企業がJACに加入していると、技能評価試験や教育訓練を通じて、外国人材は自分の将来の目標を持って働けるようになります。企業側としても、JACの仕組みを利用することで、「うちの会社はキャリアアップを支援してくれる」という安心感を外国人材に与えられ、高い定着率に繋がるでしょう。

JACの加入は、安定した人材確保に繋がる、企業経営にとって大きなメリットがあるのです。

まとめと導入チェックリスト

ここまで、建設業の特定技能制度におけるJACの役割や費用、実務的な手続きについて詳しく解説してきました。JACへの加入は義務です。制度を正しく理解し活用することで、外国人材を安定的に確保し、企業の発展にも寄与するでしょう。

最後に、自社の状況をチェックし、スムーズな導入を実現するためのチェックリストを紹介します。ぜひ役立ててください。

自社がJAC加入すべきかの判断基準

建設業で特定技能外国人を受け入れる場合、JACへの加入は必須です。未加入で受け入れるという選択はありません。

しかし、建設業の特定技能は、他の在留資格と比べて、JACへの負担金やCCUS登録、受入計画の認定など、独特のコストと手間がかかるのも事実です。

そのため、特定技能の外国人を雇う際は、その手間をかけるだけのメリットがあるかを、改めて自社の経営戦略と照らし合わせて判断しましょう。

加入から受入までのスケジュール確認

JACへの加入から特定技能外国人の入国・就労開始までは、出入国在留管理庁の審査期間を含め、通常3ヶ月程度かかるのが一般的です。

特に時間がかかるのは、JACの入会審査と特定技能受入計画の認定審査です。場合によっては、出入国在留管理庁への在留資格申請に時間がかかることもあるでしょう。

そのため採用計画を立てる際は、余裕を持ったスケジュールを組むのが重要です。

制度活用で押さえておくべき注意点

JACに加入しても、すべての支援義務が免除されるわけではありません。中でも以下の点は注意が必要です。

  • ● 報告義務
  • ● 同一賃金

特に賃金は日本人と同等以上でなければならず、外国人であることを理由に低く設定しないようにしましょう。

JACを活用しつつも、法令を遵守する責任は企業側にあると常に意識し、不明点は専門機関へ相談しながら進める姿勢が大切です。

ご相談・お問合せはこちらからどうぞ

 
■この記事を書いた人■
森山敬代表

森山 敬(もりやま たかし)
行政書士法人Climb代表。創業時から国際業務であるビザ申請・帰化申請に特化。外国人のビザ申請件数は年間約1,000件、豊富な経験とノウハウに自信があります。入管業務についての知見をもとに、顧問として企業に対する外国人雇用のアドバイザリー業務も担当。

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