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「特定技能外国人を受け入れたいが、協議会への加入は本当に必要なのか」
「加入しないとどうなるのか、法律で義務付けられているのか知りたい」
特定技能制度の導入を検討している企業担当者の多くが、このような疑問を抱えているのではないでしょうか。
特定技能協議会という言葉は聞いたことがあっても、加入が必須なのか任意なのか、いつまでに加入すればいいのかといった具体的な情報がなく、判断に迷っている方も多いでしょう。
そこで本記事では、「特定技能協議会の概要から加入義務の有無」について解説します。
その他、「手続き方法」や「費用」、「加入後の対応」までわかりやすく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
特定技能協議会とは?
特定技能協議会とは、特定技能外国人を適正に受け入れるために、各分野の所管省庁が設置・運営する組織です。
外国人材の保護と適正な労働環境の確保、業界全体での受け入れ体制の整備を目的としており、以下の目的・内容で運営されています。
- ● 特定技能の外国人の受け入れに関する制度や優良事例の周知
- ● 法令遵守の啓発
- ● 就業構造の変化や経済情勢に関する情報把握・分析
- ● 人手不足や受け入れ状況等を踏まえた大都市圏への集中を回避するための対応策の検討や調整
- ● 受け入れの円滑かつ適正な実施のために必要なその名の情報・課題等の共有・協議など
必要に応じて指導や支援をしてくれるため、受入企業にとっては頼りになる組織です。
ただし、建設分野では国土交通省、介護分野では厚生労働省といったように、業界によってそれぞれ協議会が異なります。
各協議会には分野の特性に応じた独自のルールや基準が設けられているのもあり、それぞれの協議会に加入しなければいけません。
協議会の目的と設立背景
協議会の主な目的は、特定技能外国人の適正な受け入れと保護、制度の健全な運用です。外国人の人権を守りながら、健全な外国人材の受け入れを実施するために運営されています。
実際、過去の技能実習制度では賃金未払いや長時間労働、不当な扱いなどの問題が発生していたのもあり、特定技能制度ではそうした問題を繰り返さないような仕組み作りがされています。協議会もその一環です。
協議会は定期的に企業を訪問して労働条件を確認したり、外国人から直接話を聞いたりします。問題が発見された場合は改善指導を行い、悪質なケースでは行政機関に報告もしています。特定技能の外国人を受け入れるにあたって、必ず関わる組織なのです
協議会の主な役割と活動内容
協議会の主な役割は、受入企業の監督や情報収集と共有です。ときには、制度改善への提言をすることもあります。
主な活動内容としては、以下が該当します。
- ● 巡回指導:企業を訪問し、雇用契約や労働条件、外国人の生活状況を確認する
- ● 定期報告の受理:企業から提出される雇用状況の報告書を確認・分析する
- ● 相談対応:企業からの問い合わせに対応し、適切な助言を提供する
- ● 情報提供:制度変更や注意事項を企業に周知する
- ● 統計データの収集:受け入れ状況を集計し、政策立案に活用する
- ● 制度改善の提言:現場の声を集め、より良い制度への改善を提案する
これらの活動を通じて、協議会は特定技能制度の適正な運用と継続的な改善を支えています。特定技能制度を適正に運用するためにも、非常に重要な役割を担っているのです。
協議会への加入は義務?
協議会への加入は、特定技能外国人を受け入れるすべての企業に義務付けられています。
加入しない企業は、特定技能外国人の受け入れを認められません。
例えば建設分野で特定技能外国人を受け入れる場合、建設特定技能受入計画の認定を受ける必要がありますが、その要件の1つとして「建設分野特定技能協議会の構成員であること」が明記されています。介護分野や製造業分野など、他の分野も同様です。
したがって、特定技能外国人を受け入れる企業は、必ず該当分野の協議会に加入しなければなりません。法的義務と認識しておきましょう。
加入が必要なタイミングと対象
協議会への加入タイミングは、2024年2月15日の告示改正により、受け入れ前に加入することが義務付けられています。それまでは4ヶ月前での加入でも良かったのですが、2025年現在においては受け入れ前に必ず加入しなければなりません。
初めて加入申請をする際は書類の不備などが多くなりやすいため、受け入れると決めた時点ですぐに申請に取りかかった方が良いでしょう。
加入しない場合のリスク
協議会への加入は、法的義務です。外国人を受け入れるのであれば、必ず加入しなければなりません。そのため、加入していない企業は受入要件を満たしていないとみなされます。
以下のようなリスクが発生すると認識しておいた方が良いでしょう。
- ● 新しい特定技能外国人の受入ができない
- ● 在留期間更新が不許可になる
- ● 行政指導や懲罰の対象になる
- ● 企業の信頼性が低下する
どれも大きなリスクなため、必ず期限内に協議会への加入手続きを完了させましょう。
協議会の加入手続き
協議会への加入手続きは、申請書類の準備、オンラインまたは郵送での提出、そして承認という流れで進みます。
各分野の協議会は、企業が受け入れ要件を満たしているかを確認するため、一定の書類提出と審査を求めています。
手続きの方法は分野によって異なり、オンラインシステムを利用する分野もあれば、郵送で対応する分野もあります。
例えば建設分野では、建設キャリアアップシステム(CCUS)を通じて電子申請を行います。介護分野では、厚生労働省の指定するウェブサイトから申請書をダウンロードし、必要事項を記入して郵送またはオンラインで提出します。
各分野の所管省庁のウェブサイトに詳しい手順が掲載されています。
自社が受け入れる分野の手続き方法を事前に確認し、計画的に準備を進めることが重要です。
加入の流れと申請方法
協議会への加入は、必要書類の準備→申請書の提出→審査→承認通知という流れで進みます。
以下の流れをイメージするとわかりやすいでしょう。
- Step 1:必要書類の確認と準備(1~2週間)
- ● 協議会の公式サイトで必要書類リストを確認
- ● 登記事項証明書、事業概要書、雇用契約書の写しなどを準備
- ● 申請書に必要事項を記入
- Step 2:申請書類の提出(1日)
- ● オンライン・郵送・メールで提出
- ● 提出先は各分野の協議会事務局
- ● 受付番号や確認メールを保管
- Step 3:審査(1~4週間)
- ● 協議会による書類審査
- ● 不備がある場合は追加書類の提出を求められる
- ● 必要に応じて電話やメールでの確認
- Step 4:承認通知の受領
- ● 加入承認通知書の受領
- ● 会員番号の付与
- ● 費用が必要な分野では支払い手続き
提出方法に関しては特定技能によって異なるため、どの方法で受け付けているのかは事前に確認してください。
場合によっては協議会の構成員へ提出する場合もあるため、ギリギリにならないようにすると余裕を持って申請できます。
必要書類と準備のポイント
協議会への加入申請には、大きくわけて以下の書類が必要です。
- 【企業に関する書類】
- ● 登記事項証明書(発行から3ヶ月以内)
- ● 会社案内またはパンフレット
- ● 事業所の所在地を確認できる書類
- 【事業内容に関する書類】
- ● 事業概要書
- ● 許認可証の写し(建設業許可証など、該当する場合)
- ● 直近の決算書類
- 【雇用に関する書類】
- ● 雇用契約書の写し(特定技能外国人との契約)
- ● 1号特定技能外国人支援計画書
- ● 組織図や従業員名簿
準備のポイント
- ● 登記事項証明書は最新のものを取得する
- ● 雇用契約書は必ず日本語版を用意する
- ● 支援計画書は具体的で実行可能な内容にする
- ● コピーではなく原本の提出が求められる書類もあるため確認する
これらの情報をもとに、企業議会は申請する企業が実在して適正に事業を営んでいるかや、外国人を適切に雇用できる体制があるかを確認します。
書類の準備には時間がかかるため、早めに取りかかり、不備がないよう確認してから提出しましょう。
分野別の加入先と違い
特定技能の協議会は、分野によって加入先が異なります。以下の表を参考に、それぞれの所管省庁が設置する協議会に申請しましょう。
| 分野 | 所管省庁 |
|---|---|
| 介護 | 厚生労働省 |
| ビルクリーニング | 厚生労働省 |
| 工業製品製造業 | 経済産業省 |
| 建設業 | 国土交通省 |
| 造船・舶用工業 | 国土交通省 |
| 自動車整備 | 国土交通省 |
| 航空 | 国土交通省 |
| 宿泊 | 国土交通省 |
| 農業 | 農林水産省 |
| 漁業 | 農林水産省 |
| 飲食料品製造業 | 農林水産省 |
| 外食業 | 農林水産省 |
| 自動車運送業 | 国土交通省 |
| 鉄道 | 国土交通省 |
| 林業 | 林野庁 |
| 木材産業 | 林野庁 |
協議会に加入する際は、まず自社の事業内容に該当する分野の協議会を特定しておくとスムーズに進められます。
協議会にかかる費用
協議会の費用は分野によって大きく異なります。協議会の運営方法や財源は各分野で異なり、業界団体の会費でまかなう分野もあれば、受入企業からの負担金で運営する分野もあるためです。無料の分野もあれば、年会費や負担金が必要な分野もあると認識しておきましょう。
そうした点から、受け入れを計画する際は、まず協議会にかかる費用を事前に確認したうえで予算に組み込むことをおすすめします。
建設分野の年会費・負担金
建設分野では、入会金や年会費、外国人1人あたりの負担金など、複数の費用が発生します。
2025年11月現在、主な費用は以下の通りです。
- ● 正会員(建設技能人材機構(JAC))に入会している建設業者団体:年会費36万円
- ● 所属している団体が建設業者団体の正会員:その団体が定める会費(年会費3~12万円)
- ● 賛助会員:年会費24万円
- ● 1号特定技能外国人(1人あたり):12,500円 / 月
上記を見てもわかるように、受入機関は建設業者団体が共同で設置する正会員団体に所属するか、賛助会員になるかを求められます。
年会費も必要になるため、月々の受入負担金と併せて予算を組み立てておきましょう。
他分野の費用と無料の例
建設分野以外の多くの分野では、協議会への加入自体はほとんどが無料です。2025年現在、負担金を設けているのは工業製品製造業となり、30,000~83,000円の負担になります。
ただし、協議会への加入は無料でも、業界団体への加入が実質的に必要な場合は会費が発生するケースがあります。自社が受け入れる分野の費用体系を事前に確認し、予期しない出費を避けるようにしましょう。
費用の支払い方法と時期
費用の支払い方法と時期は分野によって異なりますが、多くは銀行振込です。中にはクレジットカードやコンビニ決済が可能なところもあるため、入会予定の協議会の支払い方法を確認しておくと良いでしょう。
また、支払いのタイミングに関しては、特定技能外国人を受け入れた月移行、年会費以外は毎月発生します。年会費は入会後すぐに支払い、以降は入会月を起点にカウントされます。
加入後の義務と企業の対応
協議会に加入した後も、受入企業には定期的な報告や巡回指導への対応、外国人材の適正な雇用管理などの継続的な義務が生じます。
協議会は加入時の審査だけでなく、加入後も企業が適正に外国人を雇用し続けているかを監督する役割があるため、受入企業には定期的な情報提供と協力が求められます。
どのようなものがあるのが、以下にわけて詳しく見ていきましょう。
- ● 巡回指導の報告の内容
- ● 支援計画の作成と実行状況の確認
- ● 外国人材の安定雇用に向けたサポート
巡回指導と報告の内容
協議会による巡回指導では、労働条件や生活環境、支援体制の実施状況などが確認されます。協議会は、書類上だけでなく実態として外国人が適切に処遇されているかを確認する役目があるためです。定期的に企業を訪問して、実地調査をしています。
巡回指導で確認される主な項目は、以下の通りです。
- ● 労働条件の確認
- ● 生活環境の確認
- ● 支援体制の確認
- ● 外国人へのヒアリング
雇用契約書通りの給与が支払われているのかや、労働時間が適正かなど、雇用と生活の両方の面を確認しています。
また、受入企業も協議会の巡回指導を受けるだけでなく、定期的に以下の情報を報告しなければいけません。
- ● 外国人の氏名、国籍、在留資格、在留期間
- ● 従事している業務内容
- ● 報酬額と労働時間
- ● 離職者がいる場合はその理由
巡回指導は突然実施される場合もあるため、常に適正な雇用管理を心がけ、記録を整理しておきましょう。
支援計画の作成と実行状況の確認
1号特定技能外国人を受け入れる際は、法律で定められた以下の10項目の支援を確実に実施し、その記録を保管する必要があります。
- ● 事前ガイダンス
- ● 出入国時の送迎
- ● 住居確保、生活に必要な契約支援
- ● 生活オリエンテーション
- ● 外国人がしなければならない官公署に対する届出の同行等
- ● 日本語学習の機会の提供
- ● 相談・苦情への対応
- ● 日本人との交流促進
- ● 転職支援
- ● 定期的な面談・行政機関への通報
これらの中でも、事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談・苦情への対応・定期的な面談に関しては、外国人が十分に理解できる言語で行うよう求められています。場合によっては通訳人の協力も必要になるでしょう。
外国人材の安定雇用に向けたサポート
協議会は外国人材の安定的な雇用を実現するため、企業に対して情報提供やセミナー、相談対応などのサポートを提供しています。主なサポートは以下の通りです。
- ● 定期開催の意見交換会や情報交換会への参加
- ● 分科会での外国人材定着に向けた事例共有
- ● 行政機関・支援機関との合同勉強会
- ● 自社の取り組みを発表するプレゼンテーション機会の提供
協議会は監督機関であると同時に、企業の良きパートナーでもあります。困ったことがあれば積極的に相談し、外国人材の定着率向上につなげていきましょう。
よくある質問(FAQ)
ここからは、特定技能の協議会について、企業担当者からよく寄せられる質問にお答えします。ぜひ参考にしてください。
加入はすぐに必要?
特定技能の外国人材を受け入れるとなった時点で、協議会へはすぐに加入しましょう。以前は4ヶ月前での加入でも良かったのですが、2025年現在は受け入れ前の加入が義務化されています。
初めての場合、書類準備や審査に時間がかかる場合もあるため、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めるようにしましょう。
複数職種を扱う場合の対応は?
複数の分野で特定技能外国人を受け入れる場合、原則として各分野の協議会にそれぞれ加入する必要があります。分野ごとに独立して設置・運営されているためです。1つの協議会への加入で、複数分野をカバーはできません。
そのため、複数分野での受け入れを予定している場合は、各分野の協議会の規則を確認したうえで、必要な手続きと費用を事前に把握しておきましょう。
協議会への連絡・問い合わせ方法
協議会への連絡は、主に以下の方法で行います。
- ● 電話
- ● メール
- ● 専用の問い合わせフォーム
各協議会は企業からの問い合わせに対応する窓口を設けており、制度に関する質問や手続きの相談に応じています。ただし、受付時間が設けられているため、時間帯には注意しましょう。
不明点や疑問があれば、早めに協議会に問い合わせることで、手続きミスや期限超過を防げます。遠慮せず積極的に活用しましょう。
まとめ
特定技能協議会は、外国人材の適正な受け入れと保護、制度の健全な運用を目的として設置されており、加入していない企業は法令違反となります。そのため、加入は特定技能外国人を受け入れるすべての企業に義務付けられた重要な手続きです。
外国人の受入を検討している企業の方は、本記事の内容を参考に、法令を遵守しながら外国人材が安心して働ける環境を整備していってください。もし不安な点がある場合は、行政書士などの専門家のサポートを活用するのもおすすめです。