特定技能1号の外国人を受け入れる企業(受入れ機関)には、外国人に対する支援を行う義務があります。この支援は、登録支援機関に全部または一部を委託することができますが、「どこまで委託できるのか」「一部委託にはどんな条件があるのか」「委託の手続きは何をすればよいのか」は分かりにくいところです。
本記事では、登録支援機関への支援委託の範囲(全部委託・一部委託・自社支援の違い)と、委託の手順、費用負担のルールを、出入国在留管理庁の公表情報をもとに解説します。
【結論】登録支援機関への支援委託のポイント
- ● 支援の義務を負うのは受入れ機関。支援は登録支援機関に全部または一部を委託できる
- ● 全部委託すれば、受入れ機関は支援体制の基準を満たすものとみなされる
- ● 一部委託や自社支援の場合は、受入れ機関自身が支援体制の基準を満たす必要がある
- ● 登録支援機関は、受託した支援の全部を他の機関に再委託することはできない
- ● 支援の費用は受入れ機関が負担し、外国人本人に負担させることはできない
- ● 支援委託契約の締結・変更・終了時は、14日以内に出入国在留管理庁への届出が必要
1.特定技能外国人への支援業務の委託とは
特定技能1号の外国人を雇用する受入れ機関は、「1号特定技能外国人支援計画」に基づいて支援を行わなければなりません(出入国管理及び難民認定法第19条の22第1項)。一方で、この支援の実施は、登録支援機関に委託することもできます(同条第2項)。
登録支援機関とは、受入れ機関から委託を受けて、受入れ機関に代わって特定技能1号外国人への支援を実施する機関で、出入国在留管理庁長官の登録を受けています。委託の形は、支援の全部を委託する「全部委託」と、一部だけを委託する「一部委託」の2つがあります。
2.委託できる支援業務(義務的支援10項目)
受入れ機関が行わなければならない支援(義務的支援)は、次の10項目です。これらの全部または一部を登録支援機関に委託できます。
| 支援項目 | 主な内容 |
|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 業務内容・労働条件・日本で行える活動などを、外国人が理解できる言語で説明する |
| ② 出入国時の送迎 | 入国時は空港等から事業所・住居まで送迎し、帰国時は空港の保安検査場まで同行する |
| ③ 住居確保・生活に必要な契約の支援 | 住居探しの支援、銀行口座・携帯電話・ライフラインの契約の補助 |
| ④ 生活オリエンテーション | 金融機関・医療機関・交通ルール・生活ルールなど日本での生活に必要な情報の提供 |
| ⑤ 公的手続等への同行 | 住居地の届出、社会保障・税などの手続きへの同行や書類作成の補助 |
| ⑥ 日本語学習の機会の提供 | 日本語教室や学習教材の情報提供など |
| ⑦ 相談・苦情への対応 | 職業生活・日常生活・社会生活の相談や苦情に、外国人が理解できる言語で対応する |
| ⑧ 日本人との交流促進 | 地域の行事やお祭りなどの案内、参加の補助 |
| ⑨ 転職支援 | 受入れ機関側の都合で雇用契約を解除する場合に、転職先探しなどを支援する |
| ⑩ 定期的な面談・行政機関への通報 | 3か月に1回以上、外国人本人とその監督者と面談し、法令違反があれば関係行政機関へ通報する |
3.全部委託・一部委託・自社支援の違い
| 項目 | 全部委託 | 一部委託 | 自社支援 |
|---|---|---|---|
| 支援の実施者 | 登録支援機関 | 受入れ機関+登録支援機関 | 受入れ機関 |
| 受入れ機関の支援体制の基準 | 満たすものとみなされる | 受入れ機関自身が満たす必要あり | 受入れ機関自身が満たす必要あり |
| 向いているケース | 外国人の受入れ実績や支援体制がない企業 | 体制はあるが、一部の支援(外国語対応・送迎など)の人手が足りない企業 | 受入れ実績・支援体制・外国語対応が整っている企業 |
▼ 全部委託が必要になるケース
受入れ機関が自ら支援を行う(一部委託を含む)には、支援体制の基準を満たす必要があります。主な内容は次のとおりです。
- ・過去2年間に就労系の在留資格をもつ外国人(中長期在留者)の受入れ・管理を適正に行った実績があり、役職員の中から支援責任者・支援担当者を選任していること
- ・または、過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した経験がある役職員の中から、支援責任者・支援担当者を選任していること
- ・外国人が十分に理解できる言語で支援を実施できる体制があること
- ・支援の状況に関する文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上保管すること など
これらを満たせない企業(例:外国人を雇用した実績がなく、生活相談の経験者もいない企業)は、登録支援機関に支援の全部を委託することになります。全部委託した場合は、支援体制の基準を満たすものとみなされます。
▼ 一部委託するときの注意点
一部委託は、支援体制は整っているものの、「外国語での対応だけ任せたい」「空港送迎や公的手続きへの同行の人手が足りない」といった場合に選ばれます。一部委託では次の点に注意が必要です。
- ・委託しない部分を含め、受入れ機関自身が支援体制の基準を満たしている必要がある
- ・どの支援項目を誰が実施するかを明確にし、支援計画書にも正しく記載する
- ・委託範囲があいまいだと、支援の漏れ(義務的支援の未実施)につながり、受入れ機関の責任が問われるおそれがある
▼ 登録支援機関は受託した支援を再委託できない
登録支援機関は、受入れ機関から委託を受けた支援業務の全部を、他の個人・団体(他の登録支援機関を含む)に委託することはできません(出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」)。通訳者などを履行補助者として使うことは認められていますが、支援の実施責任は委託を受けた登録支援機関にあります。
4.登録支援機関に委託する手順
▼ STEP1 委託の要否と委託範囲を決める
自社が支援体制の基準を満たしているかを確認し、全部委託・一部委託・自社支援のどれにするかを決めます。一部委託の場合は、委託する支援項目を具体的に決めておきます。
▼ STEP2 登録支援機関を探す
登録支援機関は、出入国在留管理庁のホームページで公開されている「登録支援機関登録簿」で確認できます。選ぶときは、次の点をチェックしましょう。
- ・対応言語:登録支援機関ごとに対応可能な言語が登録されています。受け入れる外国人の母国語に対応しているかを確認します
- ・所在地:送迎や公的手続きへの同行など、現地での対応が必要な支援もあるため、事業所や住居に近い機関のほうが対応しやすくなります
- ・支援内容と費用の内訳:月額費用に含まれる支援と、別料金になる支援を確認します
▼ STEP3 支援委託契約を結ぶ
登録支援機関との間で支援委託契約を結びます。契約には、少なくとも受託する支援業務の内容と支援業務に要する費用の額及びその内訳を盛り込む必要があります(出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」)。
▼ STEP4 支援計画を作成し、在留資格の申請を行う
1号特定技能外国人支援計画を作成し、在留資格の申請書類とあわせて提出します。支援計画書には、支援項目ごとに委託の有無や委託先を記載します。
▼ STEP5 契約の変更・終了時は14日以内に届出
受入れ機関は、支援委託契約を締結・変更・終了したときは、その日から14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。登録支援機関を変更する場合や、委託範囲を変える場合も届出が必要です。
5.委託費用の考え方
義務的支援にかかる費用は、受入れ機関が負担しなければならず、送迎費用や通訳費用などを含め、外国人本人に直接・間接に負担させることはできません(出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」)。支援委託費も受入れ機関が支払います。
支援委託費の相場や内訳、比較の方法は、登録支援機関費用を徹底解説|相場・内訳・比較ガイドで詳しく解説しています。
6.2027年4月からの支援体制要件の見直し
2027年(令和9年)4月1日から、1号特定技能外国人の支援体制に関する要件が見直されます。主な改正点は次のとおりです。
- ・支援を行う事業所ごとに、支援責任者・支援担当者をそれぞれ1名以上選任する
- ・支援業務は支援責任者等が行う
- ・支援責任者等1名あたりの支援対象者は50人未満(登録支援機関が受託できる受入れ機関は支援責任者等1名あたり10機関未満)
- ・支援責任者に対し、支援能力向上のための養成講習の受講を義務付ける
自社支援や一部委託を検討している企業、委託先の登録支援機関を選ぶ企業は、改正後の要件にも対応できるかを確認しておきましょう。
7.よくある質問
▼ Q. 全部委託から一部委託や自社支援に切り替えることはできますか?
A. 受入れ機関自身が支援体制の基準を満たしていれば可能です。支援委託契約の変更・終了として14日以内の届出が必要になるほか、支援計画の内容も変わるため、切り替え前に委託範囲と実施体制を整理しておきましょう。
▼ Q. 委託先の登録支援機関を途中で変更できますか?
A. 変更できます。従前の支援委託契約の終了と新たな契約の締結について、それぞれ14日以内に届出を行います。支援に空白期間が生じないよう、引き継ぎの時期に注意が必要です。
8.まとめ
特定技能1号外国人への支援は、登録支援機関に全部または一部を委託できます。外国人の受入れ実績や支援体制がない企業は全部委託、体制が整っている企業は一部委託や自社支援も選択できますが、一部委託の場合は受入れ機関自身が支援体制の基準を満たす必要があります。
委託する場合は、委託範囲と費用の内訳を契約で明確にし、契約の締結・変更・終了時の届出も忘れないようにしましょう。自社が委託すべきか、どこまで委託すべきかお悩みの場合は、特定技能制度に詳しい行政書士等の専門家にご相談ください。
参考:出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」/出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」/出入国在留管理庁「1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の主な改正点(令和9年4月1日から施行)」
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