日本では、人が死亡した場合は相続が発生し、死亡した方(被相続人)の財産がその配偶者や子等に受け継がれることになります。
では、日本に帰化した元外国人の方が死亡した場合の相続はどうなるのでしょうか。行政書士がわかりやすく解説します。
相続が発生したら何をするべき?
▼ 本国と日本、どちらの法律が適用される?
まず、日本に帰化した元外国人の方が被相続人となる相続では、元々の国籍国の法律が適用されるのか、日本の法律が適用されるのかどちらでしょうか。
この場合、財産を相続する配偶者や子等(相続人)が外国籍であったとしても、被相続人が帰化して日本国籍であれば日本の法律が適用されます。
▼ 相続人の範囲は?
次に、相続が発生したらするべきことは「相続人の範囲の確定」です。
相続人の範囲の確定をするために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得します。
日本の戸籍については、被相続人が日本に帰化した時点以降の戸籍しか取得することができません。
日本に帰化する以前の戸籍については、帰化前の母国の戸籍謄本やその代わりになる書類(死亡証明書、出生証明書、婚姻証明書等)を取り寄せて、翻訳文をつけることになります。
▼ 元韓国籍で帰化した方が被相続人となる場合
ここでは、1つのケースを取り上げてご説明します。
25歳で日本に帰化し、日本国籍となった元韓国人のAさんが死亡したとします。
被相続人となる相続の場合には、以下のような手順で必要な書類を取得します。
- ① 日本に帰化した時以降のAさんの「日本の戸籍謄本」を取得する
- ② 帰化する以前(25歳以前)の戸籍を取得するために、「外国人登録原票」を取得する
- ③ 外国人登録原票に記載されている出生地を確認し、在日韓国大使館に対し、「家族関係登録簿等証明書(戸籍謄本)」の取得申請をする
- ④「家族関係登録簿等証明書」を韓国語から日本語に翻訳する
以上のような流れで、出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、相続人の範囲の確定させます。
ただし、すべてのケースに当てはまるとは限りませんので、不安な場合には専門家へ相談することをお勧めします。
▼ 被相続人の帰化前の本国に戸籍制度がない場合
世界の国々では、日本のような戸籍制度がない国がとても多くあります。
そのため、被相続人の帰化前の本国に戸籍制度がない場合には、戸籍謄本に代わる書類(相続人の範囲を確定するに資する書類)を収集する必要があります。
この場合、帰化前の本国における「死亡証明書」、「出生証明書」、「婚姻証明書」等を取得し、これらの日本語訳を付けることになります。
また、場合によっては相続人を証明するための「宣誓供述書」を作成することもあります。
このように、被相続人の帰化前の本国に戸籍制度がない場合には、どの証明書類が必要なのかという検討から実際の取得と翻訳の作業があるために、日本人だけの相続手続きに比べて難しいものになります。