日本で働きたいと考えたとき、真っ先に候補に上がるのが「特定技能ビザ」ですが、ここで大きな壁となるのが国籍の問題です。
「自分の国籍でもこのビザは取れるのだろうか?」「特定の国の人しか対象にならないのではないか?」といった疑問を抱えて、なかなか一歩を踏み出せない方は少なくありません。
せっかく日本語や技能の勉強を頑張っても、そもそも自分の国籍が対象外だったらどうしようという不安は、将来を左右する大きな悩みです。もし間違った情報に振り回されて無駄な準備をしてしまったら、その時間や努力は取り返しがつきません。
そこで本記事では、「特定技能ビザにおける国籍」について詳しく解説します。「日本と協力関係にある国の一覧」はもちろん、最新の動向までを詳しく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
特定技能ビザと国籍の基本情報
特定技能ビザを取得するにあたって、国籍がどのように影響するのかは非常に重要な情報です。まずは制度の根本的なルールを確認していきましょう。
- ● 特定技能に国籍制限はあるのか?
- ● 日本と協力覚書(MOC)を結んでいる国とは
特定技能に国籍制限はあるのか?
結論から言うと、特定技能ビザそのものに厳格な国籍制限はありません。以前は一部の国籍に制限がありましたが、現在は撤廃されています。
基本的にはどの国の方でも、必要な試験に合格し、受け入れ企業が決まれば申請が可能です。
ただし、例外としてイランとトルコは特定技能の在留資格を取得できません。帰国命令や退去命令を出したとしても入国を認めない措置が取られているため、雇い入れたとしても特定技能の外国人材ではなく、移民や難民としての扱いになります。行政的な要因に基づいていた処置であると、認識しておくと良いでしょう。
日本と協力覚書(MOC)を結んでいる国とは
日本政府は、悪質な仲介業者を排除し円滑な送り出しを行うために、特定の国と協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)を締結しています。国同士の約束事であるため、MOCを結んでいる国では現地の公的な手続きルートが整備されているのが特徴です。2026年現在、以下の17ヶ国があります。
- ● フィリピン
- ● カンボジア
- ● ネパール
- ● ミャンマー
- ● モンゴル
- ● スリランカ
- ● インドネシア
- ● ベトナム
- ● バングラデシュ
- ● ウズベキスタン
- ● パキスタン
- ● タイ
- ● インド
- ● マレーシア
- ● ラオス
- ● キルギス
- ● タジキスタン
MOCがあることで、送り出しの際の不当な手数料徴収などを防げるだけでなく、労働者が守られる仕組みが整えられているという証にもなります。特定技能の外国人を受け入れる際の1つの参考として有効です。
特定技能の対象国一覧と最新動向
日本で働く特定技能外国人の数は年々増加しており、出身国も多様化しています。ここからは主要な国々と、最近の傾向について以下にわけて整理します。
- ● 主な対象国(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)
- ● 近年増加している国籍別の傾向
- ● MOC未締結国からの申請は可能か?
主な対象国(ベトナム、フィリピン、インドネシアなど)
特定技能で働く方が特に多い主要な国々は、出入国在留管理庁が公表している「特定技能在留外国人数」によると、令和7年6月末時点で以下の通りです。
| 国籍・地域 | 総数 |
|---|---|
| ベトナム | 146,270人 |
| インドネシア | 69,384人 |
| ミャンマー | 35,557人 |
| フィリピン | 32,396人 |
| 中国 | 19,901人 |
| ネパール | 9,329人 |
| カンボジア | 7,159人 |
| タイ | 6,212人 |
これらの国々は、現地での試験実施回数も多く、日本への送り出し実績が豊富です。特にベトナム国籍の方は、技能実習生から特定技能への移行もあり、他の国籍と比べても圧倒的な数値になっています。
近年増加している国籍別の傾向
近年増加している国籍は、以下の通りです。
| 国籍・地域 | 総数 | 増加率 |
|---|---|---|
| ネパール | 9,329人 | 約33% |
| スリランカ | 2,990人 | 約36% |
| インド | 578人 | 約43% |
参考:出入国在留管理庁 | 「特定技能在留外国人数の公表等」(令和7年6月末・令和6年12月末)
このように、最近ではネパールやスリランカ、インドなどからの受け入れが増えつつあります。ベトナムやインドネシアの増加量と比べると微々たる数値ではありますが、増加幅として無視できない数値です。
MOC未締結国からの申請は可能か?
日本とMOCを締結していない国の方であっても、特定技能ビザの申請はできます。原則、国籍を問わず特定技能を取得できる国に制限がないためです。
ただし、現地の政府による送り出しの許可手続きが整っていないため、書類の準備に時間がかかったり、個別に事情を説明する書類が必要になったりする場合はあります。前述したようにイランやトルコのような例外となっている国もあるため、まずは出入国在留管理庁のホームページで、最新の情報を確認しましょう。
国籍による手続きの違い
同じ特定技能ビザでも、「どこで手続きを始めるか」「どの国籍なのか」によって準備すべきものが変わります。ここでは以下にわけて、具体的なケース別の違いを見ていきましょう。
- ● 海外試験の有無と実施国の違い
- ● 国内在留者(留学生・技能実習生)からの切り替えケース
- ● 国籍ごとに注意すべき送出機関・手続き
海外試験の有無と実施国の違い
特定技能に必要な技能試験や日本語試験は、すべての国で実施されているわけではありません。自分の国で試験がない場合は、近隣の国へ行って受験する必要があります。
日本とMOCを結んでいる主要国では現地試験が頻繁に行われていますが、それ以外の国では試験会場の確保そのものが課題となるケースもあるため、事前の情報収集が重要です。
まずは出入国在留管理庁と日本語能力試験JLPT、外国人日本語能力検定JLCTのホームページで、開催場所を確認するようにしましょう。
国内在留者(留学生・技能実習生)からの切り替えケース
すでに日本にいる留学生や技能実習生が特定技能へ切り替える場合、国籍による違いは比較的少なくなります。日本国内で実施される試験を受け、合格すれば申請が可能です。
ただし、以下の国籍の方は、国内の切り替えであっても自国政府への届出や承認が必要な場合があります。
- ● ベトナム:推薦状の取得
- ● フィリピン:DMWへの登録
- ● カンボジア:登録証明書の取得
- ● タイ:居住地報告や届出
このような二国間のルールを知らずに手続きを進めると、トラブル発生の原因になります。日本国内の切り替えであっても、自国のルールを確認するようにしましょう。
国籍ごとに注意すべき送出機関・手続き
特定技能ビザは、フィリピンのように政府機関を通じた厳しい管理が必要な国もあれば、カンボジアのように特定の送り出し機関を通さなければならない国もあります。
国籍によって必ず使わなければならない窓口が決まっていることが多いため、独自の判断で進めないようにしましょう。各国のルールに精通した専門家や大使館、登録支援機関に相談する方が安全です。
企業が採用時に確認すべきポイント
企業が特定技能外国人を受け入れる際は、国籍ごとの法的な義務を正確に把握しておく必要があります。トラブルを未然に防ぐためにも、以下の点には注意しましょう。
- ● 在留カードで確認すべき国籍と資格内容
- ● 国籍別に異なる受け入れルールと注意点
- ● 採用前に確認すべき実務チェックリスト
在留カードで確認すべき国籍と資格内容
採用面接時には必ず在留カードを確認してください。特に確認したいのは、以下の項目です。
- ● 国籍
- ● 現在の在留資格
- ● 在留カード番号が有効か
- ● 在留カードの有効期限がいつまでか
このように国籍はもちろんですが、現在の在留資格が特定技能なのかどうかは必ず確認しましょう。人によっては、技能実習や留学からの切り替え予定といった場合があります。
また、カードの番号が有効であるか、有効期限がいつまでかも重要なポイントです。不法就労のリスクを確実に排除し、適切な雇用契約のためにも確認しておきたいポイントといえます。
国籍別に異なる受け入れルールと注意点
国籍によって、雇用主が現地政府に支払うべき費用や、作成すべき特有の書類が異なります。例えば、以下のような違いがあります。
- ● フィリピン:現地の雇用契約承認が必要
- ● ベトナム:送り出し機関との契約確認が必要
- ● ミャンマー:大使館を通じた手続きが必要
このように、国ごとにルールが異なるため、各国の特性に合わせたスケジュール管理が必要です。画一的に手続きを進めないようにしましょう。
採用前に確認すべき実務チェックリスト
円滑な採用のためには、確認すべきリストがあります。中でも大切な、以下の項目は必ず確認しましょう。
- ● 候補者の国籍は日本とMOCを締結しているか
- ● その国籍特有の送り出し手続き(政府承認など)が必要か
- ● 日本語試験および技能試験の合格証は手元にあるか
- ● 通算の在留期間に余裕があるか
上記の項目を事前にチェックすることで、入管への申請をスムーズに進められます。受入申請には時間がかかるため、逆算して早めに行動するようにしましょう。
まとめ
特定技能ビザと国籍の関係は、一見複雑に見えますが、正しい情報を掴めば決して難しくありません。最後に大切なポイントを振り返りましょう。
国籍制限の誤解をなくすために知っておくべきこと
特定技能は、やる気と技能があるすべての人が対象の制度です。原則として、国籍による制限はありません。自分の国籍では無理だと思い込む前に、まずは試験の実施状況や手続きのルートを調べてみましょう。
MOCの有無に関わらず、基本的には個人の実力と受け入れ企業の合意があれば特定技能ビザの取得は誰でもできます。
ただし、イランやトルコのように例外となっている国もあるため、特定技能ビザを取得できる国なのかどうかは、念のため事前に調べておくと良いでしょう。
最新の対象国情報を常にチェックする重要性
日本の入管制度は、人手不足の状況や国際情勢に合わせて柔軟に変化しています。昨日まで難しかった国籍の手続きが、今日から緩和されることも珍しくありません。
そのため、入管の公式サイトや信頼できるニュースを定期的にチェックし、最新の対象国情報を把握しておきましょう。不安な場合は、外国人雇用を専門に取り扱っている行政書士に相談するのもおすすめです。