このコラムでは、特定技能外国人の労働契約における雇用期間は「有期雇用」でも良いのか、それとも「無期雇用」でなければならないのか、さらに「会社都合」で契約を終了するときはどうなるのか?という企業からの質問に、ビザ申請のプロである行政書士が「特定技能雇用契約」について、わかりやすくご説明します。
1.特定技能外国人を雇用する場合の待遇をどう考えるべきか
特定技能ビザを持つ外国人を雇用し受け入れる企業には、入管法・労働関係法令・社会保険関係法令・租税関係法令の遵守が求められ、特定技能というビザの制度が適正に運用されることを確保して、特定技能外国人の安定的かつ円滑な在留活動を確保する責任が求められます。
そのため、特定技能ビザを持つ外国人の報酬については、同経験・同業務を行う日本人従業員と同等以上の雇用条件であることが必要となります。
つまり、報酬の決定・労働時間・社会保険加入・教育訓練の実施・福利厚生施設の利用等の点について、外国人であるからという理由で、待遇上、差別的な扱いをしてはならないという規制があります。
特定技能外国人の雇用に対しては、日本人に対するのと同じように労働基準法等が適用されることになります。
2.有期雇用?無期雇用?
▼ 有期雇用の場合はビザがとれない?とりにくい?
特定技能外国人の雇用契約期間についても、日本人従業員と同じように設定する必要があります。
ただし、「特定技能1号」ビザの期間は通算して最長で5年間であるために、無期雇用と設定することは厳密に言えばビザの内容とは合致しないと言えます。
そして、労働基準法上、有期雇用の契約期間は原則として3年とされます(労働基準法14条)。
そのため、特定技能ビザの外国人の雇用契約期間としては、3年と設定することが一般的です。
▼ 有期労働契約を会社都合で終了するとどうなる?
有期雇用の契約を会社の都合で終了することは、契約期間が終了する時点における会社の状況によっては十分にありえることです。
そのような状況の会社の対応方法を記載するものとして、特定技能ビザの申請時の「1号特定技能外国人支援計画書」中に「非自発的離職時の転職支援」の項目があります。
有期労働契約を会社都合で終了する場合には、この転職支援として、契約を終了する特定技能外国人に対し、次の受入れ先に関する情報を提供したり、離職時に必要な行政手続きについての情報を提供する等の支援をすることになります。
3.「非自発的離職者」とは?発生させるとどうなる?
▼ 「非自発的離職者」とは?
まず、特定技能外国人を受け入れる所属機関には、特定技能雇用契約の締結日より前の1年以内に、受け入れる特定技能外国人が就く業務と同種の業務に従事していた労働者(フルタイムの従業員を指します)を離職させていないことが求められます。
ただし、定年退職や自己都合退職の場合はこれに該当しません。
そして、非自発的離職者とは、下記のような理由による離職者を指します。
- ・人員整理を行うための希望退職の募集又は退職勧奨を行った場合(天候不順や自然災害の発生によりやむを得ず解雇する場合は除く)の離職者
- ・労働条件に係る重大な問題(賃金低下、賃金遅配、過度な時間外労働、採用条件との相違など)など、労働者・就業環境に係る重大な問題(故意の排斥、嫌がらせなど)があった場合の離職者
- ・特定技能外国人の責に帰すべき事由によらず有期労働契約が終了した離職者
▼ 「非自発的離職者」を発生させるとどうなる?
非自発的離職者を出した場合には、受け入れ困難に係る届出を提出する義務が発生します。
届出は、特定技能外国人を受け入れることが困難な事由が発生した日から14日以内に行う必要があります。
なお、届出の内容には、受け入れが困難となった理由や特定技能外国人の現状、そして上述の転職支援などの「特定技能外国人の活動継続のための措置」も含まれることになります。
なお、この届出は「特定技能雇用契約の終了に係る届出」の前に行う必要がありますので、注意してください。