特定技能外国人の給料・給与水準を知りたいということは、あなたは日本の企業の人事労務担当者もしくは特定技能ビザを取得したい外国人の方でしょう。
ここでは主に、特定技能ビザをもつ外国人を採用したい企業の担当者様向けに、行政書士がわかりやすく解説します。外国人の方も参考になる内容ですからぜひ読んでみてください。
1.まずは日本人の最低賃金をチェック
結論を簡潔に言ってしまうと、特定技能外国人の給与水準は日本人と同等以上と定められています。「外国人労働者の賃金は安い」というイメージは捨てなければなりません。では「日本人と同等」の意味について詳しく見ていきましょう。
▼ 最低賃金とは
最低賃金とは、最低賃金法に基づく最低賃金制度により、使用者(企業)が労働者に対して支払うことが求められる一定の賃金を言います。具体的な最低賃金の額は地域毎に定められます。例えば、2021年4月現在、東京都であれば一時間あたり1,013円、大阪府であれば964円、愛知県であれば927円というように差異があります。
仮に、月給額を使用者と労働者との間で取り決めて合意したとしても、その月給額が最低賃金額以下である場合、その取り決めは法律上無効とされます。この場合の月給額はその地域における最低賃金と同額の定めをしたものとして扱われることになります。
企業の人事労務部門の担当者は、勤務地の地域の最低賃金を把握しておくことが求められます。最低賃金は更新され続けていますので、情報をキャッチできるようにしておきましょう。
下記、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」が参考になりますので、チェックしてみてください。
▼ 最低賃金は外国人労働者にも適用されるのか
最低賃金制度は日本における全ての労働者を対象にしているため、日本で働いている外国人労働者にも日本人と同様に最低賃金の定めが適用されます。
- <日本人と同等以上の給与水準>
- 特定技能外国人の場合には、上記の最低賃金のルールに加えて、「同程度の経験を有し、同業務に従事するその会社の日本人従業員と同等かそれ以上の給料を設定しなければならない」というルールがあります。
2.具体的な給与額の考え方とは?
▼ 賃金規定がある場合
特定技能外国人を雇う企業に賃金規定がある場合には、同程度の経験を有し、同業務に従事する日本人従業員がその賃金規定に沿って支払われている給料と同等以上の給料が特定技能外国人の給料として設定される必要があります。
例えば、建設会社に勤める職歴4年の建設作業員である日本人従業員の月給が20万円である場合には、その会社で「特定技能1号」(建設分野)を申請する技能実習2号修了者である外国人の月給は20万円以上である必要があります。技能実習2号を修了している者は、その実習の分野において4年の職務経験があると見込まれるからです。
▼ 賃金規定がない場合
では、企業に賃金規定が無い場合はどうなるでしょう?
賃金規定がない場合には、同業の企業に勤める類似業務に従事する日本人従業員を比較対象として挙げます。その日本人従業員と外国人の履歴書、給与明細、標準報酬月額決定通知書、役職の有無、責任の内容、地域の業界水準等を資料として提出して、特定技能ビザを申請する外国人の給料と比較対象となる日本人の給料の差が合理的であることを説明します。
- <賃金規定がない場合のチェック項目>
- ・地域の業界水準
- ・学歴・職歴
- ・給与明細
- ・役職の有無
- ・責任の有無
▼ 日本人従業員がいない場合
ここまでの説明において、「同等の業務に従事する日本人の給与額」が、外国人従業員の給与額の決定時の参考値になることをお伝えしてきました。
しかし、賃金規定もなく、比較対象として挙げられる日本人も在籍していない場合には、どうしたら良いでしょうか?
その場合は、申請書類に記載の報酬額と、「入管が保有する同地域の参考となる特定技能外国人の報酬額とを比較する」とされています。
- <ポイント>
- 日本人の月給額が参考値として使えない場合、同地域の特定技能外国人の報酬額が参考値となる
なお、詳細は出入国在留管理庁の特定技能外国人の報酬に関する説明書を参考にしてください。
3.特定技能外国人の給与支給・賞与は?
▼ 給与からの控除について
特定技能外国人の給料から、必要なものを控除できます。源泉徴収・社会保険料・住民税等、日本人従業員が給与から徴収されているものについては、特定技能外国人も同様に給与から控除できます。
- <特定技能外国人の給与から控除されるもの>
- ・厚生年金
- ・雇用保険
- ・源泉所得税
- ・住民税(社会人2年目の6月から)
- ・介護保険(40~64歳まで)
ちなみに、企業側が、この「給与天引き」という仕組みについて事前に説明し、外国人従業員の理解を得ておくことは非常に大事です。説明しておかなかったり、説明してもきちんと同意が得られていないと、「給料が思ったより少ない」「嘘をつかれた」などと、いらぬ不信感を抱かせる原因になってしまいますので注意が必要です。
▼ 手当・賞与(ボーナス)・昇給について
特定技能外国人に対する手当・賞与・昇給の定めについてもすべて、比較となる日本人従業員と同等以上に定める必要があります。極端な話、「日本人従業員にはない〇〇手当が外国人従業員には支給される」ということはあっても、それは会社の方針なので問題ありませんが、「日本人に支給されている手当が、外国人従業員には支給されない」ということはあってはなりません。
常に「日本人と同等か、それ以上」の基準を実現できるように意識することが必要です。
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