このコラムでは、帰化申請の際によくある質問「納税の状況」について解説します。
税金を納めているかどうか = 納税の状況が帰化申請にどの程度影響を与えるのか?についてはよくご質問をいただきます。
「税金の未納がありますが帰化申請はできるでしょうか?」「年金は去年から払い始めたけれど、不許可になりますか?」など、年金や税金の未納のご相談は非常に多くなっています。
そこで、帰化申請に詳しい行政書士がこの不安や疑問にお答えします。
1.帰化申請において、なぜ納税や年金を納めることが必要か
1-1 国籍法の定め
帰化申請が許可されるための条件が規定されている国籍法第5条は、以下のように定めています。
第5条
法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
(中略)
三. 素行が善良であること
1-2 「素行が善良である」とはどんなこと?
国籍法第5条1項3号には、いわゆる素行要件についての定めがあり、この素行要件の内容は「日本の法律を遵守しているか」ということです。
日本の法律には納税や年金についての定めがあり、帰化の審査の中では適法にこれらの支払いがなされているかについての審査がなされることになります。
納税や年金の納付について、未納があれば「法令を遵守していない」とみなされ、帰化申請をしても不許可になってしまう確率が上がる恐れがあります。
では、税金・年金のそれぞれについての滞納は、何年程度の場合に不許可の可能性が上がってしまうのでしょうか?
2. 税金・年金の滞納はどのくらい帰化に影響する?
2-1 納税状況は何年分が審査の対象か?
▼ 給与所得者(確定申告をしていない方)の場合
原則として
- 所得税 直近1年分
- 住民税 直近1年分
を納税しているかどうがが、帰化申請の審査対象となります。
▼ 個人事業主の場合
原則として
- 所得税 直近2年分
- 住民税 直近1年分
- 個人事業税 直近2年分
- 消費税 直近2年分
を納税しているかどうがが、帰化申請の審査対象となります。
▼ 法人経営者の場合
原則として
- 所得税 直近2年分
- 住民税 直近1年分
- 法人税 直近2年分
- 法人事業税 直近2年分
- 法人市県民税 直近1年分
- 消費税 直近2年分
を納税しているかどうがが、帰化申請の審査対象となります。
※特別永住者の場合になります。
2-2 年金の納付情報は何年分が審査の対象か
▼ 給与所得者(確定申告をしていない方)の場合
原則として
- 厚生年金 直近1年分
が、帰化申請の審査対象となります。
▼ 個人事業主の場合
原則として
- 厚生年金(該当者) 直近1年分
が、帰化申請の審査対象となります。
▼ 法人経営者の場合
原則として
- 厚生年金 直近1年分
が、帰化申請の審査対象となります。
※特別永住者の場合になります。
2-3 確定申告の状況はどうなるか
確定申告は個人事業主、自営業の方だけがするものではなく、会社員やアルバイト、パートタイマーでも場合によってはする必要があります。
帰化申請では、確定申告を適切にしているかどうかは素行要件のみならず生計要件にもかかわってくる部分なので注意が必要です。
主に下記の場合には、正社員やアルバイト、パートタイマ―でも確定申告が必要になります。
- ・アルバイトやパートを2か所以上かけもちしている場合
- ・不動産所得がある場合
- ・年間20万円を超える所得の副業をしている場合
- ・一年の途中で転職、退職をしている場合(転職先の会社で年末調整をしている場合には不要)
2-4 家族の納税状況は影響するか
所得税の納税証明書が必要になるのは、主に
- ・帰化申請をする本人
- ・本人と同居をしている者
- ・本人の生活費の支援者
です。
これらの方の納税が適切にされていない場合には、本人の帰化申請が不許可になる可能性があります。
2-5 滞納があっても帰化申請はできるか
税金の滞納がある場合には、未納の状態の納税証明書を提出するわけにはいきません。未納分を完納した上で、未納分が無い状態の納税証明書を発行してもらった上で法務局に提出しましょう。
また、国民年金に未納がある場合には、1年分は支払いをした上で帰化申請をする必要があります。
申請時のポイントとしては、間違っても虚偽申請しないことです。もしも自身の納税状況や年金の納付状況に不安がある場合には、専門家である行政書士や法務局に相談をしましょう。
「帰化したいけど、自分は申請できるのかな?」「自分は条件を満たしているのかな?」と迷う場合は、ぜひ一度、行政書士法人Climbにご相談ください。