帰化申請をお考えの方、特に在日韓国人の方などから、「帰化したことが職場や将来結婚する相手にバレたくないのですが…」「帰化したことがバレない方法はありますか?」と相談を受けることがあります。 差別的な扱いを受けることをできる限り避けたいというお気持ちでしょうから、不安な気持ちは十分理解できます。
結論から言うと、帰化したことを完全にわからなくすることはできません。手続き上、記録は残るからです。
ただし、わかりにくくすることはできます。
このコラムでは、その方法をビザ・帰化専門の行政書士がわかりやすく解説します。
1.帰化したことがバレる可能性のある場面は?
まず、どのような場面で帰化申請していることや、帰化したことがバレるのか、ご説明します。
① 帰化申請の手続き中に職場にバレてしまう?
帰化申請をする際には、さまざまな書類の提出が求められます。その必要書類の中に、「在勤及び給与証明書」というものがあり、この書類で勤務先の会社や勤務期間、給与額、税金額などを証明します。この「在勤及び給与証明書」の作成を会社に依頼した場合に、担当者には帰化しようとしていることがわかってしまいます。
この書類は、2003年からは提出の必要がなくなりました。代わりに、前月の給与証明書(原本)と社員証(原本)を提示することとなっています。
そのため、帰化申請中に職場にバレてしまう可能性はなくなりました。「職場にバレたくない」と思っている方はご安心ください。
また、手続き方法や制度は随時変更されていくため、「帰化申請中であること」がバレることを避けたい方は、法務局でその旨を相談し、まわりの人や会社・職場の人に知られたくないことを法務局の担当者に事前に伝えておくことをお勧めします。
② 帰化がバレる最大の原因とは?
帰化がバレる最大の理由はズバリ、「戸籍」です。
帰化する際は、日本人として戸籍を新たに作りますが、その際に戸籍の記載事項として帰化したことが記されます。この記載事項が削除されることはありません。
戸籍謄本をみれば、帰化したことがわかるのです。
ただし、表面上わかりにくくすることができます。その方法については、このコラムの後半でご説明します。
③ 名前から帰化したことを推測されることもある
帰化する際には、日本人の名前をつけることができるようになります。この際、たとえば在日韓国人や中国人の方が日本に帰化した際によく付けられる名前を選んだ場合、その名前から「この人は帰化したのでは?」と疑われる場合があります。
ただし、外国人(とくに在日韓国人や中国人)と日本人との違いに敏感な方でない限り、怪しまれたり気づかれたりすることはないと思われます。
2.帰化がバレない(バレにくい)ようにする方法とは?
前述の「戸籍謄本を見れば帰化したことが記載されているため、帰化がバレることがあるが、戸籍をみても帰化したことがわからないようにするための方法」について、お話していきます。
戸籍から帰化がバレることを防ぐ方法には、「転籍」という方法と、「分籍」という2種類の方法があります。
▼ 帰化がバレない方法① 転籍
まず、「転籍」からご説明します。
「転籍」とは、簡単に言うと「本籍の引っ越し」となります。
手続き自体は複雑なものではありません。引っ越しと同時に、本籍も新しい住所地に変更すれば良いのです。
転籍前の戸籍に帰化した事実が記載されていたとしても、転籍後に作成された戸籍には、帰化したという事実は記載されません。
転籍すれば、見た目では在日だったことや帰化したことがわからなくなります。
ただし、帰化してから作成された戸籍をすべて見ることは手続き上可能ですので、戸籍をさかのぼれば、必ず帰化した事実にたどりつくことになります。この点には注意が必要です。
▼ 帰化がバレない方法② 分籍
戸籍の筆頭者あるいはその配偶者以外の人で、成年(日本では20歳、2022年4月1日からは18歳)に達していれば、在籍している戸籍から独立して、自分だけの新しい戸籍を作成することができます。これが「分籍」です。
この際も、帰化した事実が記録として引き継がれることはありませんので、表面上は帰化したことをわかりにくくし、外国人あるいは在日韓国人だったこと等がバレないようにすることができます。
ただし、一度分籍すると、二度と元に戻すことはできなくなるので注意が必要です。
詳しくは住所管轄地の役所でご確認ください。
3.帰化したことがバレる「タイミング」とは?
どのような時に、外国人/在日韓国人から帰化したことが「バレる」でしょうか?
それは、2で述べた「戸籍謄本」が何かの手続き上で必要になるタイミング、と考えることができます。
▼ 戸籍謄本が必要な手続きとは?
帰化したことがバレるとしたら、主に戸籍謄本からですが、具体的に、戸籍謄本が必要になるタイミングや、手続きにはどのようなものがあるでしょうか?
- 【戸籍謄本が必要になる主な場面】
- ・結婚するとき
- ・パスポートの申請
- ・年金の請求
- ・生命保険の請求
- ・遺言書の作成
- ・相続手続き
上記のような場面で戸籍謄本が必要になり、戸籍謄本を見れば帰化したことがわかるようになります。
▼ 結婚の直前に転籍や分籍をすると在日を疑われる?
上記のような手続きの【直前】に戸籍を転籍あるいは分籍すると、タイミング的に「この人は外国人/在日韓国人なのか?「過去に何か隠したいことがあるのではないか?」などと疑われることがあります。 なぜなら、転籍や分籍は「戸籍をリセットする」「きれいにする」などと言われ、何かうしろめたいことがあった場合にするものと考える人もいるからです。
例えば、結婚の直前に戸籍から帰化がバレないように転籍や分籍をすると、何か後ろめたいことがあるのでは、消したい過去があるのでは、と疑いを受けることがあります。
現在でも、年配の方の中には、自分の身内が外国人/在日韓国人と結婚することに抵抗のある方も多いようですし、年代や地域によっては根強い抵抗感を持つ方もいるようです。
そのため、帰化申請した後は戸籍も独立させておくと良いでしょう。
誰かに理由を聞かれたら、「親からきちんと独立・自立したいので」など、シンプルな理由を伝えればよいだけです。
▼ 自分だけ帰化して、両親が帰化していないケースにも注意
自分だけ帰化し、転籍や分籍をしたとしても、父母の氏名は戸籍に記載されます。その際に、自分だけ帰化して日本人氏名になっていたとしても、父母の名前が中国名や韓国名など外国の氏名だった場合も、やはり「帰化したことがバレる」ことになりますので、お気をつけください。
このような場合にそなえて、帰化申請は家族全員でするのが良いと思われます。
「帰化したいけど、自分は申請できるのかな?」「自分は条件を満たしているのかな?」と迷う場合は、ぜひ一度、行政書士法人Climbにご相談ください。