「日本に長年住んでいて、帰化申請を考えているが、許可されるか不安だ」
「自分に何か問題があって、帰化できないのではないかと心配している」
このような不安を抱えている外国人の方は多いのではないでしょうか。日本で生活を築き、家族もいて、日本国籍を取得したいと真剣に考えているのに、自分が帰化の条件を満たしているのかと悩んでいる方は少なくありません。
実際に、帰化申請は永住許可よりもさらに厳格な審査が行われるため、過去の税金の支払い状況や交通違反の履歴など、多岐にわたる要件が細かくチェックされます。
本記事では、「帰化申請が認められない理由」について詳しく解説しています。「不許可を避けるための対策」や「万が一不許可になった場合の対応方法」も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
帰化申請の基本条件
帰化が許可されるためには、国籍法で定められたいくつかの高いハードルを越える必要があります。まずは自分が条件を満たしているのか、以下にわけて確認してみましょう。
- ● 住所要件(在留年数と継続性)
- ● 素行要件(違反歴や生活態度)
- ● 生計要件(収入と生活の安定性)
- ● 日本語能力要件
住所要件(在留年数と継続性)
帰化を希望する方は、引き続き5年以上日本に住所を有している必要があります。「引き続き」となると難しいように感じてしまうかもしれませんが、短期の海外観光や数ヶ月程度の短期留学などであれば、日本を離れていてもほとんど影響はありません。
一方で、年単位で海外で暮らしていたり、1年のうち半分以上は海外にいたりといった場合は、引き続き住んでいないと判断される可能性があります。会社からの命令で長期の海外出張などで国外にいた場合は、会社からの命令だとわかる資料があれば認められる場合もあるため、保管しておくと良いでしょう。
なお、引き続き日本で暮らしているとはいっても、不法滞在者は帰化が認められていません。
素行要件(違反歴や生活態度)
素行要件では、日本社会において真面目な生活を送っているかどうかが判断されます。犯罪歴がないことは大前提ですが、日常生活における小さなルール違反も対象です。
例えば、駐車禁止や速度超過といった軽微な交通違反も、過去5年間に何度も繰り返していると、日本の法律を守る意識が低いとみなされます。単に法律を守るだけでなく、地域社会に迷惑をかけていないかも審査の対象です。
さらに、場合によっては本人だけでなく同居している家族の素行も影響する可能性があります。帰化申請をする際は、家族全員が社会のルールを守り、穏やかに暮らしていると証明するようにしましょう。
生計要件(収入と生活の安定性)
生計要件では、日本で自立して生活していける能力があるかどうかを問われます。具体的な年収額は提示されていませんが、年収300万円程度を目安と考えておきましょう。なお、扶養する家族がいる場合は、その分、必要な年収も上がります。
また、年収とともに借金も重要です。借金が多くなるほど審査にも影響するため、安定して日本で生活できるかどうかを示す必要があります。住宅ローンや車のローンであれば延滞していないのなら問題ありませんが、消費者金融などからの多額の借り入れはマイナス評価になりかねません。
さらに、一緒に住んでいる家族や同居している恋人、友人がいる場合も審査の対象になります。ただし、自身に収入がなかったとしても、同居人に安定した収入や資産がある場合、生計条件をクリアできる可能性があります。
日本語能力要件
国籍法で明文化はされていませんが、日本語能力を有しているかも重要です。帰化後の生活で、日本人として支障なくコミュニケーションが取れるかが確認されます。
日本人となる以上、日常生活に支障のない程度の日本語能力は必要です。小学校2年生から3年生程度の読み書き能力は身につけておきましょう。法務局での面接の際、日本語でのやり取りがスムーズにできないと判断されると、日本語のテストを受けることもあります。
なお、日本語能力試験(JLPT)などの日本語に関する資格を持っていると、審査で有利になる可能性があります。
帰化できない典型的な理由
帰化の条件を満たしていると思っていても、実際には細かな部分で不許可になるパターンが多く存在します。ここからは、よくある失敗の原因を深く掘り下げてみましょう。
- ● 税金や社会保険料の滞納
- ● 安定した収入がない、生活が不安定
- ● 交通違反や犯罪歴など素行の問題
- ● 書類不備や虚偽記載
税金や社会保険料の滞納
不許可理由の筆頭に挙げられるのが、お金にまつわる義務の不履行です。特に税金や社会保険料の滞納が大きく、以下を支払えているかどうかは必ず確認しましょう。
- ● 住民税
- ● 所得税
- ● 年金
- ● 健康保険
これらを1つでも支払っていない、あるいは支払いが遅れていると、帰化は認められません。特に自分で納付書を持って支払いに行っている方は、注意が必要です。うっかり忘れていて期限後に支払ったのはいいものの、数日でも期限を過ぎた履歴があると、審査では誠実さがないと判断されてしまいます。
そのため、少なくとも申請前の直近1年から2年は、一日も遅れずに支払っている実績を証明できる状態にしておきましょう。
安定した収入がない、生活が不安定
帰化申請は、雇用形態が派遣社員や契約社員であっても申請は可能ですが、契約が短期間で終わる予定だったり、頻繁に職を変えていたりすると不許可のリスクが高まります。
また、自営業や経営者の方は、会社の経営状態も調査対象です。赤字決算が続いていたり、債務超過の状態だったりすると、将来的に生活が破綻する可能性があるとみなされます。
最近転職したばかりの方は、新しい職場での試用期間が終わってから申請すると良いでしょう。
交通違反や犯罪歴など素行の問題
帰化申請では、交通違反や犯罪歴といった素行も確認されます。交通違反に関しては明確な基準はありませんが、過去5年間の交通違反が合計で5回以上ある場合は、不許可になる可能性が非常に高いと言われています。一度の大きな違反だけでなく、小さな違反の積み重ねも重視されるため、注意しましょう。
また、飲酒運転や無免許運転などの重大な違反がある場合は、その後5年から10年程度は帰化申請が難しくなると言われています。自分の過去の違反歴を正確に把握していない方も多いため、帰化申請の際は警察署で運転記録証明書を取り寄せて確認しておく必要があります。
一方の犯罪歴に関しては、在留資格に関係するものと法律に違反するものの2つが対象です。在留資格は入国してからの在留状況をチェックされ、法律に関しては窃盗や暴行が該当します。過去の犯罪によって起訴されていた場合、処分されてから10年間は帰化申請が難しくなると考えておきましょう。
書類不備や虚偽記載
帰化申請では、書類不備や虚偽記載が認められていません。特に虚偽記載は犯罪になります。帰化申請書には膨大な情報を記入しますが、事実と異なることを書くのは絶対に避けてください。
例えば、過去の離婚歴を隠したり、親族との関係を偽ったりするなどです。自分に不利になる交通違反や過去のオーバーステイ経験などを書かないのも虚偽記載に含まれます。
法務局は本人の申告だけでなく、公的な記録や実地調査で裏付けを取ります。嘘が発覚した時点で、その他の条件がどれほど良くても、不許可の決定が下されます。場合によっては1年以下の懲役または20万円以下の罰金の処罰を受けるため、しないようにしましょう。
申請後に起こりやすい不許可リスク
書類を提出してから結果が出るまでには、通常1年程度の長い時間がかかります。この待機期間中に以下のようなことが起こると、審査に大きな影響を及ぼす可能性があります。どのような事態なのか、以下にわけて詳しく見ていきましょう。
- ● 長期出国や転職による要件不充足
- ● 申請後の違反行為や納税遅延
- ● 面接内容と書類の齟齬
長期出国や転職による要件不充足
申請を出した後に、海外の実家で急病人が出た、あるいは海外プロジェクトを任されたといった理由で長期間日本を離れる場合、不許可になる可能性があります。審査中であっても、居住要件を維持しなければならないためです。
状況にもよりますが、合計で100~150日以上日本を離れてしまうと、法務局から申請を取り下げるようにアドバイスされることがあります。審査途中に転職する場合も同様です。収入が下がったり、新しい職種で安定性が確認できなかったりすると、再度の追加調査が必要になり、結果として不許可に繋がります。
ただし、長期出国に関しては会社の命令だとわかる書類があれば、提出すれば考慮してもらえます。わかり次第、追加で提出しましょう。
申請後の違反行為や納税遅延
帰化申請の書類を提出した後に、交通違反をしたり、税金の支払いを忘れたりする場合は、素行に直結する出来事として扱われます。法務局は、審査の最終段階まで申請者の最新の情報をチェックしているため、気を緩めないようにしましょう。
許可が出る日まで、今まで以上に慎重に、法律やルールを守った生活を送らなければなりません。
面接内容と書類の齟齬
申請から数ヶ月後に法務局で行われる面接は、審査の大きな山場です。提出した書類の内容について詳しく聞かれますが、書類に書いた内容と異なる話をしないようにしましょう。
もし、書類に書いた経歴や親族関係と面接での回答が食い違ってしまうと、どちらかが嘘であると疑われてしまいます。
一般的に、面接までは早くて3ヶ月程度かかります。人間の記憶は時間が経つと曖昧になるため、自分がどのような書類を提出したのか、コピーを取って何度も読み返しておくと良いでしょう。
帰化申請で不許可を避けるための対策
不許可を未然に防ぎ、許可を得るには、申請前の準備段階が重要になります。以下の参考に申請の手続きを進めましょう。
- ● 申請前に準備すべきチェックポイント
- ● 納税・社会保険の確実な完納
- ● 生活基盤と収入の安定化
- ● 行政書士など専門家に相談するメリット
申請前に準備すべきチェックポイント
帰化申請をする前は、以下のチェック項目を参考に、現在の自分の状況を客観的に見直してみてください。
- 【住所要件のチェック】
- ● 引き続き5年以上日本に住所を有している
- ● 就労可能な在留資格で3年以上在留している
- ● 長期出国(90日以上)をしていない
- ● 年間出国日数が150日以内
- ● 日本に生活の本拠がある
- 【素行要件のチェック】
- ● 犯罪歴がない
- ● 過去5年間に重大な交通違反がない
- ● 軽微な交通違反も最小限(年1回程度以内)
- ● すべての違反金を支払っている
- ● 近隣トラブルや暴力行為がない
- 【生計要件のチェック】
- ● 安定した収入がある(世帯で年収300万円以上が目安)
- ● 正社員または安定した自営業
- ● 1年以上同じ職場で勤務している
- ● 借金が適正範囲内(返済に問題ない)
- ● 預貯金がある
- ● 生活保護を受給していない
- 【納税関係のチェック】
- ● 過去5年間の所得税をすべて納付している
- ● 過去5年間の住民税をすべて納付している
- ● その他の税金(事業税、固定資産税など)を納付している
- ● 厚生年金または国民年金を納付している
- ● 健康保険料を納付している
- ● 滞納や遅延がない
- 【日本語能力のチェック】
- ● 日常会話ができる
- ● 小学校3年生程度の漢字が読み書きできる
- ● 簡単な文章を理解し、作成できる
- ● 面接で質問を理解し、答えられる
- 【書類準備のチェック】
- ● 必要書類リストを確認した
- ● すべての書類を準備できる見込み
- ● 母国の書類(出生証明書など)を取得できる
- ● 動機書を自分で書ける
これらの中で1つでも不安な項目がある場合は、申請のタイミングをずらすのも検討しましょう。
納税・社会保険の確実な完納
納税・社会保険を納期日までに納税しているかどうかも確認しましょう。特に会社員の方は、給与天引きでない住民税がないか再度確認してください。国民年金や国民健康保険を自分で払っている場合は、領収書を全て保管しておくのも大切です。支払った証明になります。
もし過去に遅れがあった場合は、その後1~2年は期限を厳守した実績を作ってから申請しましょう。なお、病気や失業など、やむを得ない理由で滞納した場合は、証拠を準備すれば許可が下りる場合があります。
生活基盤と収入の安定化
帰化の申請では、現在の職場で継続して働いているかどうかも重要です。生計要件を満たすためにも、生活基盤を整えましょう。例えば、以下のような形です。
- ● 正社員として就職する
- ● 最低1年以上は同じ職場で勤務する
- ● 昇給や昇進を目指す
- ● 資格を取得してスキルアップをする
- ● 借金を完済する
- ● クレジットカードの借入を減らす
- ● 毎月一定額を貯金する
これらの他、自営業の方は以下にも気を付けましょう。
- ● 継続的な収益を証明できるようにする
- ● 確定申告を適切に行う
- ● 事業の安定性を示す証拠を保管する
もし副業をしている場合は、正しく確定申告を行い、適切な税金を納めていることを証明できるようにしてください。共働きの場合は、配偶者の収入証明書や源泉徴収票も揃えておく必要があります。
生活の安定性をアピールするために、家計に無理がないことを書類で論理的に示せるようにしましょう。
行政書士など専門家に相談するメリット
帰化申請の書類は、自分で集めると役所を何往復もすることになりがちです。翻訳作業だけでも膨大な時間が必要になります。忙しい中で申請をするのは大きな負担にもなるため、行政書士などの専門家に相談する方法も考えましょう。
専門家に相談することで、不許可になるリスクを事前に察知できるのはもちろん、対策を講じられます。過去の違反についてどのように反省文を書くべきか、出国理由をどう説明すべきかといった、個別の事情に合わせたフォローもしてくれます。
費用はかかりますがメリットも大きいため、帰化申請で不安な方は相談も検討してみましょう。
不許可となった場合の対応
もし不許可という結果になってしまっても、日本での生活が即座に終わるわけではありません。以下を参考に、冷静に次のステップを考えましょう。
- ● 再申請は可能か?
- ● 改善すべきポイントの見直し方法
再申請は可能か?
帰化申請に回数制限はありません。不許可になった理由が解決可能なものであれば、何度でも申請できます。ただし、同じ内容で再申請をしても不許可になるため、駄目だった部分を把握し、改善しましょう。主な改善ポイントとなるのは、以下のとおりです。
- ● 申請後に申請した内容からの変更があったのにも関わらず法務局へ報告をしていなかった
- ● 申請後に法律違反や税金の未納が発生した
- ● 申請で提出した書類に虚偽や事実と異なる記載があった
- ● 法務局からの追加書類提出に応じなかった
これらの中で、法律違反などは一定の期間を空ける必要があるため、心当たりのある項目を改善してから余裕を持って再申請しましょう。
改善すべきポイントの見直し方法
不許可の理由は、原則として教えてもらえません。ですが多くの場合、申請者自身に不許可となった心当たりがあります。
日本語能力不足であれば勉強の時間を確保する、交通違反であればさらに数年の無事故期間を置く、といった具合に改善していきましょう。
帰化申請に失敗したからといって自分を責めず、より完璧な状態で申請するための準備期間だと考えて、生活を改善していくのがポイントです。
まとめ
帰化の許可が下りないのは、多くの場合で要件を満たしていないことが理由です。「住所要件」「素行要件」「生計要件」「日本語能力要件」と、それぞれ個別に満たさなければならない要件があります。心当たりのあるものから改善し、次回の申請に繋げていきましょう。
帰化できない理由を理解する重要性
帰化申請が不許可になる理由を一つひとつ見ていくと、全て日本で安全かつ円満に暮らしていくために必要なルールであるとわかります。厳しい審査は、排除するためではなく、日本人として社会に迎え入れるための最終確認です。
理由を正しく理解し、一つずつクリアしていくプロセスそのものが、帰化において重要な項目になります。焦らずに申請を進めましょう。
計画的な準備で許可の可能性を高める
帰化申請は勢いだけでするのではなく、数年前から計画的に準備をする必要があります。税金を期限通りに払い、安全運転を心がけ、日本語の勉強を続ける。こうした日々の誠実な積み重ねこそが、最も効果的な対策です。