配偶者ビザは「結婚している」だけでは許可されません
日本人と結婚した外国人の方が日本で暮らすための在留資格「日本人の配偶者等」(いわゆる配偶者ビザ)は、法律上の婚姻が成立していることに加えて、夫婦として実際に生活を共にするための結婚であるかどうかなどが審査されます。
この記事では、配偶者ビザの審査で確認されるポイントと、具体的に確認される主な点を整理し、それぞれのケースを詳しく解説した記事を紹介します。
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配偶者ビザの審査で確認される主なポイント
- ・婚姻の実体:法律上の婚姻が有効に成立しているだけでなく、夫婦として同居し、互いに協力して生活する実体があるか
- ・交際から結婚までの経緯:出会いのきっかけや交際の経過に不自然な点がないか
- ・生活の安定性:夫婦の収入や資産で、日本で安定して生活していけるか
出入国在留管理庁が定める提出書類には、交際の経緯などを記入する質問書、日本人配偶者の住民税の課税(または非課税)証明書・納税証明書、身元保証書などが含まれており、これらの点が書類を通じて確認されます。
不許可につながりやすい5つのケース
① 収入が少なく、生活の安定性に不安がある
夫婦の収入が少ない場合は、生活の安定性が確認できないとして不許可になることがあります。収入以外の資産や、親族からの援助の予定などを説明できるかがポイントです。
収入は、なぜ配偶者ビザの審査で見られるのか
就労ビザのような収入要件や、永住許可の「独立生計要件」のような明文の基準は、配偶者ビザにはありません。それでも収入が見られるのは、次の2つの理由からです。
- ・日本での生活が成り立つか:夫婦が日本で生活していくための収入や資産があり、公共の負担にならずに暮らしていけるか
- ・結婚の真実性との関係:生活の見通しがないまま結婚・来日する場合、結婚の目的がビザではないかと疑われる一因になる
そのため申請では、日本人配偶者の住民税の課税(非課税)証明書と納税証明書(1年間の総所得と納税状況が記載されたもの)の提出が求められています。
審査官が見る「生計」のポイント
審査官は年収の金額だけで判断するのではなく、世帯全体で生活が成り立つかを総合的に見ています。
| 確認されること | 見られている点 |
|---|---|
| 世帯の収入 | 日本人配偶者だけでなく、夫婦を合わせた収入で生活できるか |
| 収入の安定性 | 雇用形態や勤続期間、今後も収入が続くか |
| 預貯金・資産 | 収入が少ない時期を補える蓄えがあるか |
| 住まい | 住居が確保されていて、家賃と収入のバランスがとれているか |
| 扶養家族の人数 | 子どもや親など、同じ収入で生活する家族が何人いるか |
| 税金・社会保険料 | 住民税や国民健康保険料・年金保険料をきちんと納めているか |
ケース別:収入が少ない・ない場合の補強方法
▼ 日本人配偶者が無職・求職中の場合
- ・求職活動の記録(ハローワークの利用記録、応募・面接の記録)や、内定通知書・雇用契約書
- ・外国人配偶者に日本での収入や内定がある場合は、その資料(日本国内で変更申請をする場合など)
- ・預貯金の残高証明書・通帳の写し
- ・親族から援助を受ける場合は、援助者の課税証明書と、援助の内容を書いた申立書
▼ 個人事業主で、所得が低く見える場合
課税証明書に載るのは、売上から経費を差し引いた「所得」です。節税のために経費を多く計上していると、実際の生活水準より所得が低く見えてしまいます。
- ・確定申告書・青色申告決算書(収支内訳書)で、売上の規模と経費の内容を示す
- ・事業用・生活用の通帳の入出金で、実際の生活費の流れを示す
- ・取引先との契約書など、今後も収入が続くことを示す資料
所得の金額は在留期間の長さ(1年か3年か)にも影響しやすいため、節税とのバランスにも注意が必要です(配偶者ビザの更新|必要書類・申請時期・手数料【2026年10月改定】)。
▼ 前年の収入は少ないが、現在は就職している場合
課税証明書は前年1年間の所得を示すものなので、転職・就職したばかりだと現在の収入が反映されません。在職証明書、雇用契約書、直近数か月分の給与明細を添えて、現在の収入を示しましょう。
▼ 年金生活・生活保護を受けている場合
年金生活の方は、年金額の分かる資料と預貯金で生活の見通しを示します。生活保護を受けていることだけを理由に一律に不許可となるわけではありませんが、審査は慎重になります。受給に至った事情や、外国人配偶者の就労などで今後どう自立していくかを具体的に説明することが大切です。
説明・資料がそろっているケースと疑問を持たれやすいケースの違い
| 説明・資料がそろっているケース | 疑問を持たれやすいケース |
|---|---|
| 収入は少なくても、預貯金・内定・親族の援助などで生活の見通しを資料で示している | 収入も資産もほとんどなく、生活の見通しについての説明がない |
| 住まいが確保され、家賃と収入のバランスがとれている | 住まいが決まっていない、家賃が収入に見合っていない |
| 住民税・社会保険料をきちんと納めている | 税金や保険料の未納がある |
| 説明の内容と通帳・証明書の数字が一致している | 説明と資料の金額が食い違っている |
税金や保険料の未納がある場合は、申請前に納付して、納付したことが分かる資料を添付するのが基本です。
② 年齢差が大きい・交際期間が短い
年齢差が大きいことや交際期間が短いこと自体で不許可になるわけではありませんが、結婚の経緯について、より丁寧な説明が必要になる場合があります。
年齢差・交際期間が短いことは、なぜ審査で見られるのか
入管が配偶者ビザの審査で最も重視するのは「婚姻の真実性」、つまりビザを得るための偽装結婚ではなく、夫婦として共同生活を送る意思と実態があるかどうかです。
婚姻届は書類がそろえば受理されるため、入管は戸籍に婚姻が記載されていることだけでは真実の結婚と判断しません。そこで、過去に摘発された偽装結婚に多く見られた特徴を手がかりに、より詳しく確認すべき案件を見分けています。その代表例が次のような事情です。
- ・夫婦の年齢差が大きい
- ・出会ってから婚姻までの期間が短い、実際に会った回数が少ない
- ・夫婦に共通の言語がなく、通訳なしでは会話ができない
- ・結婚紹介所やブローカーを通じた結婚で、高額な報酬が支払われている
- ・どちらかに短期間での結婚・離婚の繰り返しがある
- ・家族や友人が結婚を知らない、結婚式や顔合わせをしていない
これらは「当てはまったら不許可」という基準ではありません。当てはまる事情があるほど、審査官は質問書や資料を細かく読み、説明に矛盾や不自然な点がないかを確認するということです。
審査官が実際に確認しているポイントと補強資料
質問書では、出会いのきっかけ、交際の経緯、会った日付や回数、夫婦間で使う言語、紹介者の有無、結婚式の有無などを詳しく記入します。審査官はその内容と添付資料を照らし合わせて確認します。
| 確認されること | 審査官が気にしている点 | 補強に使える資料 |
|---|---|---|
| 出会いのきっかけ | 経緯が不自然でないか、紹介者に金銭が支払われていないか | 出会った場所・イベントの写真、紹介者の説明書 |
| 交際の継続性 | 婚姻届の直前だけ連絡を取っていないか | 交際当初から現在までの日付入りメッセージ履歴、通話記録 |
| 実際に会った回数・期間 | 書類上だけの関係ではないか | パスポートの出入国スタンプ、航空券・ホテルの領収書、日付入りの写真 |
| 夫婦の意思疎通 | 共通の言語で日常の会話ができるか | 会話に使う言語の説明、語学学習の記録 |
| 家族・周囲の認知 | 結婚を家族や友人に隠していないか | 両家の家族との写真、顔合わせ・結婚式・食事会の写真 |
| 結婚を決めた理由と今後の生活 | 結婚の動機に説得力があるか、生活の見通しがあるか | 理由書(住まい・仕事・子どもなどの将来設計) |
写真は枚数よりも、交際期間を通じて日付や場所が分かるものを時系列でそろえることが大切です。メッセージ履歴も、一部を抜き出すより、期間を通じてやり取りが続いていることが分かる形で提出します。質問書の書き方は質問書での「交際の経緯(理由書)」の書き方で詳しく解説しています。
年齢差が大きい場合の説明のポイント
年齢差が大きい場合、審査官は「どちらか一方が経済的な目的で結婚していないか」「日本人配偶者が利用されていないか」という視点で見ます。次の点を具体的に説明しましょう。
- ・お互いを結婚相手に選んだ理由:価値観や生活の共通点など、年齢以外の具体的なエピソード
- ・将来の生活設計:住まい、仕事、子どもを持つかどうか、親の介護や老後をどう考えているか
- ・お金の流れ:婚姻前から外国人側への多額の送金だけが続いている関係は疑われやすいため、送金がある場合はその理由も説明する
- ・家族の理解:両家の家族が結婚を知り、受け入れていること
交際期間が短い・会った回数が少ない場合の補強方法
遠距離での交際やオンライン中心の交際で、婚姻までに直接会った回数が少ないケースは珍しくありません。この場合は「少ない回数でも結婚を決めた理由」と「会っていない期間も交流が続いていたこと」を示します。
- ・時系列表を作る:いつ・どこで会い、何をしたかを一覧にし、写真や航空券の日付と一致させる
- ・会えなかった理由を書く:距離・仕事・家族の事情など、頻繁に会えなかった具体的な理由
- ・会っていない期間の交流を示す:毎日のメッセージやビデオ通話の記録
- ・婚姻後の交流を示す:婚姻後も行き来や連絡が続いていること、同居の準備(住まいの確保など)
説明・資料がそろっているケースと疑問を持たれやすいケースの違い
同じように年齢差がある、交際期間が短いご夫婦でも、結果を分けるのは「説明の一貫性」と「資料の裏付け」です。
| 説明・資料がそろっているケース | 疑問を持たれやすいケース |
|---|---|
| 交際の経緯が質問書・写真・メッセージ履歴で一貫している | 質問書の日付と写真・出入国記録が食い違っている |
| 会った回数は少なくても、交際期間を通じて連絡が続いている記録がある | 婚姻前に会ったのが1〜2回で、交流の記録もほとんどない |
| 両家の家族が結婚を知っていて、顔合わせや食事会をしている | 家族や友人が誰も結婚を知らない |
| 夫婦が共通の言語で会話できる | 通訳なしでは会話ができず、意思疎通の方法も説明できない |
| 結婚の理由と今後の生活設計を具体的に説明している | 紹介業者に高額な報酬を支払っている、婚姻と離婚を短期間に繰り返している |
③ 別居している
夫婦は原則として同居していることが前提です。仕事の都合などやむを得ない事情で別居している場合は、その理由と、夫婦としての交流が続いていることを説明する必要があります。
【関連記事】日本人配偶者ビザ|離婚・別居・死別したらどうなる?よくある質問
④ 交際の経緯の説明が不十分
質問書や理由書で、出会いから結婚までの経緯を具体的に説明できていない場合や、提出した資料と説明の内容が食い違っている場合は、審査で追加の説明や資料を求められることがあります。
【関連記事】日本人配偶者ビザの申請に必要な”質問書”での「交際の経緯(理由書)」の書き方
⑤ 偽装結婚を疑われる
在留資格を得ることを目的とした実態のない結婚(偽装結婚)は、不許可や在留資格の取消しの対象となります。本当の結婚であっても、疑われるような事情がある場合は、結婚の実態を示す資料をしっかり準備することが大切です。
【関連記事】偽装結婚と配偶者ビザ|入管が疑うケース・不許可や取消し・罰則と、結婚の実態を示す証拠
不許可になった場合の対応
不許可になった場合は、申請した地方出入国在留管理官署で、不許可の理由について説明を受けられる場合があります。理由を確認したうえで、不足していた資料や説明を補って再申請を検討します。再申請では、不許可の理由に対応した資料や説明が必要になるため、専門家に相談しながら準備することをおすすめします。
【費用面の変更】在留手数料の改定(2026年10月1日)
2026年10月1日から、在留資格の変更・更新の許可時に納める手数料が、許可される在留期間に応じた段階制になりました。手数料の改定は審査の内容とは別の、費用面の変更です。金額は在留手数料の金額一覧をご覧ください。配偶者ビザの更新手数料(2026年10月改定後)と必要書類は、こちらで解説しています。
将来の永住を見据えて
配偶者ビザから将来永住を目指す場合の「配偶者特例」は、2026年10月1日に改定された永住許可ガイドラインにより、2027年4月1日以降の申請から要件が変わります。これは永住許可の要件の話で、配偶者ビザの審査とは別のものです。詳しくは永住の配偶者特例が婚姻5年・在留3年にをご覧ください。
申請前のチェックリスト
- ・婚姻が日本と相手の国の両方で有効に成立しているか
- ・交際の経緯を、時期や出来事とあわせて具体的に説明できるか
- ・夫婦の収入や資産で、生活の安定性を説明できるか
- ・同居しているか(別居の場合は、その理由を説明できるか)(別居・離婚と在留資格の取消し)
- ・質問書の内容と、写真・連絡記録などの資料に食い違いがないか
【関連記事】配偶者ビザ(日本人の配偶者等)の要件・必要書類・申請の流れ
森山 敬(もりやま たかし)
行政書士法人Climb代表。創業時から国際業務であるビザ申請・帰化申請に特化。外国人のビザ申請件数は年間約1,000件、豊富な経験とノウハウに自信があります。入管業務についての知見をもとに、顧問として企業に対する外国人雇用のアドバイザリー業務も担当。