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外国人採用時に問題となる「オーバーワーク」とは?どんなトラブルになる?

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外国人を雇用する際、ビザ上の問題への対処は必要不可欠です。外国人は、日本で活動する理由や活動内容、期間などについて入管で審査を受け、認めてもらう必要があるからです。
しかし、外国人留学生を社員として雇用する際や、すでに雇用した外国人従業員のビザを更新する際に、あることが問題になる場合があります。「オーバーワーク」です。

このコラムでは雇用した外国人のビザ申請で問題になりがちな「オーバーワーク」について、ビザのプロである行政書士がわかりやすく解説します。

1.外国人アルバイトが働ける時間数には上限がある

企業などが外国人採用をする際に最も注意しなければならない点は、就労することが認められていない外国人を雇用し、働かせる等して、不法就労助長罪の罰則を受けることを避けることです。
もしも、本来なら採用できない外国人を雇用して不法就労助長罪が成立すると、3年以上の懲役又は300万円以下の罰金が科せられます(両方が科せられる可能性もあります)。

「留学」や「家族滞在」等の在留資格は基本的に就労が認められておらず、アルバイトをする為には資格外活動許可と言う申請をして認められなければなりません。
この資格外活動許可で働くことができるのは、原則週28時間までです。
もしも28時間を超えて働いてしまった場合、オーバーワークとなり、資格外活動違反となってしまいます。

▼ オーバーワークの基準=週28時間の数え方

では、上記の週28時間の数え方は、どのようにするべきでしょうか?
細かいお話になりますが、「日曜起算の1週間」などではない点に注意が必要です。
どの曜日から1週の起算をした場合でも常に28時間以内になっていなければなりません。
また、いくつアルバイトを掛け持っていたとしても、その合計が28時間を超えてはいけません。
1社で28時間まではありませんので、十分に確認しましょう。

2.オーバーワークが引き起こすトラブル

▼ 社員として雇用した外国人のビザ更新ができない

オーバーワークの事実が発覚して在留状況不良と評価されると、外国人のビザの更新ができない場合があります。
その代表的な例が、就労ビザ(多くは在留資格「技術・人文知識・国際業務」)取得後の初めの更新申請時です。
この場合の多くは、更新許可申請時に提出する直近年度の課税証明書・納税証明書の内容が留学生であった間の収入に係るものであることから、これら書類に記載されている収入額が、資格外活動許可で認められている週に原則28時間までという就労時間内では通常得ることができない額である場合に、オーバーワークが疑われます。

1つ事例を挙げてみます。
東京在住の外国人留学生のAさんは、2021年3月に日本の専門学校を卒業し、日本の企業Xから内定を得て「留学」から「技術・人文知識・国際業務」という就労ビザに変更(許可されたビザの期間は1年)しました。
Aさんは留学生であった2020年の間は、週に約45時間アルバイトをし、年間で約200万円の収入を得ていました。
その後、2021年4月1日から同企業で就労を開始したAさんは、2022年1月以降に「技術・人文知識・国際業務」ビザの更新申請をすることになります。
この更新申請時には、所属している企業の規模によってはAさんの令和3年度の課税証明書及び納税証明書を入管に提出することとなります。
令和3年度のこれら証明書の対象は、Aさんの2020年中の収入に係るものです。
入管はこれらの書類から、Aさんは留学生であったにもかかわらず2020年の間に約200万円もの収入を得ていたことを知ることとなり、通常の時給制のアルバイトであったならば、週に28時間以上働いていたことがあるオーバーワークをしていたと推測します。
もし仮に、「Aさんは2020年の間は週に約45時間のアルバイトしていた」と入管に判断されたとします。
その場合、Aさんはオーバーワークによる在留状況不良であると評価されます。
一度は就労ビザに変更して約1年間は就労することができたものの、はじめての就労ビザの更新時に不許可となってしまう可能性が高いです。
オーバーワークが原因で就労ビザの更新が不許可となってしまったら、Aさんはその後X社で就労することはできないため、X社としても急な人員不足に迫られるということもあるでしょう。

▼ ビザの変更ができない(学生から就職できない)

オーバーワークが理由でビザ申請が不許可となる事例として、留学ビザから就労ビザへの変更許可申請時も挙げられます。
変更許可申請時に入管に提出する必要書類の項目の中に、ビザ申請をする外国人の課税証明書や納税証明書はありません。
しかし、近年は留学生のオーバーワークについて入管は特に厳しく審査することもあり、在留状況を確認するために追加資料として課税証明書や納税証明書、源泉徴収票、アルバイトの給料が振込されていた銀行の通帳の写し、留学生であった期間におけるアルバイトの情報に関する質問書(アルバイト先の会社、連絡先、時給、勤務時間、業務内容等を記載するもの)等を特に求めてくる場合があります。
この際に提出する書類から、留学生のときにオーバーワークをしていたことが発覚すれば、学歴や就労後の仕事が適切であったとしても、在留状況不良を理由としてビザの変更ができない場合があります。

もし、外国人留学生を採用して就労してもらう場合には、雇用の際に留学生のときにアルバイトをしていたかどうか、アルバイトをしていたならどれくらいの時間していたのか、オーバーワークはなかったか等についてしっかり確認しておくことが、後々のトラブルを防ぐことに繋がります。

【外国人留学生を正社員雇用する際のチェックリスト】
アルバイトの週稼働時間数(学期中は週28時間以内、長期休み中は週40時間まで可)
留学生時代のアルバイト先(風俗店などでないか)

3.企業の責任 不法就労助長にならないために

では、留学生が資格外活動許可を得ないでアルバイトしていた、又は資格外活動許可は得ているが許可の範囲を超えた時間アルバイトをさせていた場合、アルバイト先の企業にはどのような責任が生じるでしょうか。
この場合の企業には、不法就労助長罪が適用され、3年以下の懲役または300万円以下の罰金のどちらか、あるいは双方の対象となります。

留学生が資格外活動許可を得ているかどうかは、外国人が常に携帯している「在留カード」という免許証大のカードの裏面を確認すればわかります。
在留カード裏面の「資格外活動許可欄」に「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」というスタンプが押されていれば、その留学生は資格外活動許可を得ていることになります。
なお、「資格外活動許可を得ていないとは知らなかった」等の事情があったとしても、在留カードの裏面を確認しないで雇用したというような場合等、知らなかったことに企業側の過失が認められる場合には、上記の処罰の対象となります。

また、留学生を雇う際のもう一つの注意点として、学校を卒業した後は資格外活動許可を得ていたとしてもアルバイトをすることができなくなるという点があります。
留学ビザの資格外活動許可は、あくまで留学生としての活動、すなわち在学している教育機関で学業をすることを前提として認められているものであり、教育機関を卒業しているのであれば以前に取得した資格外活動許可は有効なものではなくなるためです。

 
■この記事を書いた人■
森山敬代表

森山 敬(もりやま たかし)
行政書士法人Climb代表。創業時から国際業務であるビザ申請・帰化申請に特化。外国人のビザ申請件数は年間約1,000件、豊富な経験とノウハウに自信があります。入管業務についての知見をもとに、顧問として企業に対する外国人雇用のアドバイザリー業務も担当。

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