1.外国人はビザ(在留資格)で認められた仕事だけが可能
外国人を採用し、その外国人が日本で働く場合には、原則として就労することが認められた在留資格(いわゆるビザ)が必要となります。
そして、この就労ビザは採用された外国人が日本で従事する仕事の内容(活動の内容)によって類型化されており、主に下記のような職種によって大別されています。 外国人採用によって日本で働く外国人は、その活動内容に沿った類型のビザをもって働くことが必要なのです。
職種や仕事の内容 | 在留資格(ビザ) |
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システムエンジニア、プログラマー、精密機械器具等の設計や開発の技術者、経理、金融、総合職、デザイナー、私企業の語学教師、翻訳・通訳に従事する者等 | 「技術・人文知識・国際業務」 |
外国の事務所から日本国内の事務所に転勤した者 | 「企業内転勤」 |
外国料理の調理師、製菓技術者、ソムリエ、スポーツ指導者、航空機操縦者、動物の調教師、貴金属等の加工職人等 | 「技能」 |
外国の報道機関の記者、カメラマン | 「報道」 |
弁護士、公認会計士等 | 「法律・会計業務」 |
医師、歯科医師、薬剤師、看護師等 | 「医療」 |
介護福祉士 | 「介護」 |
政府関係機関や私企業等の研究者 | 「研究」 |
中学校、高等学校等の語学教師等 | 「教育」 |
例外的に、就労することが認められていない留学生(在留資格「留学」)、就労ビザをもって日本で働く外国人の家族(在留資格「家族滞在」)も、資格外活動許可を得ることで原則として週に28時間以内(教育機関の長期休業期間にあっては、1日について8時間以内)であれば働くことが可能となります。
また、在留資格の中にはそもそも就労の制限が無いものがあり、この在留資格を有する外国人は自己の学歴、職歴、資格等に捉われることなく日本で就労することができます。
例えば、「永住者」、永住者と婚姻している外国人やその子である「永住者の配偶者等」、日本人と婚姻している外国人やその子である「日本人の配偶者等」、日系2世や3世等の「定住者」の在留資格には就労制限はありません。
これらの点は、外国人採用を担当する方は是非押さえておいてください。依頼できる業務の範囲がかなり変わってきます。
2.代表的な就労ビザ(在留資格)について
▼ 日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務をする場合(在留資格「特定活動」(本邦大学卒業者))
上記の【 職種とマッチするビザの例 】からすると、レストランにおける接客等の一般的なサービス業務は含まれていません。
しかし、就労ビザを申請する外国人が、
- ➀ 日本の4年生の大学、又は大学院を卒業している(学歴)
- ➁ 日本語能力試験N1、又はBJTビジネス日本語能力テスト480点以上、若しくは大学又は大学院において日本語を専攻していた(日本語能力)
この➀と➁の条件を満たしている場合には、在留資格「特定活動」(本邦大学卒業者)が認められる可能性があります。
聞きなれない名前ですが、外国人を採用したい企業の担当者の方には大事な情報となりますので、この後をぜひお読みください。
このビザは、➀と②の条件を満たす外国人に、日本での日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に従事することを認めるビザです。
日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務とは、単に雇用主等からの作業指示を理解し、自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず、いわゆる「翻訳・通訳」の要素のある業務や、自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュニケーションを要する業務であることを意味します。
ただし、従事する業務の中に学術上の素養等を背景とする一定水準以上の業務が含まれている、又は今後そういった業務に従事することが見込まれることが求められます。
採用担当の方はその点に注意し、この特定活動ビザ(本邦大学卒業者)が採用したい外国人の業務内容とマッチするかどうかにご注意ください。
【在留資格「特定活動」(本邦大学卒業者)における具体的な活動例】
本制度によって活動が認められ得る具体的な例は以下のとおりです。
- 1.飲食店に採用され、店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行うもの(それに併せて、日本人に対する接客を行うことを含む)。
※ 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。 - 2.工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの。
※ ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。 - 3.小売店において、仕入れや商品企画等と併せ、通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行うもの(それに併せて、日本人に対する接客販売業務を行うことを含む)。
※ 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。 - 4.ホテルや旅館において、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設・更新作業を行うものや、外国人客への通訳(案内)、他の外国人従業員への指導を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(それに併せて、日本人に対する接客を行うことを含む)。
※ 客室の清掃にのみ従事することは認められません。 - 5.タクシー会社に採用され、観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ、自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(それに併せて、通常のタクシードライバーとして乗務することを含む)。
※ 車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。 - 6.介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、外国人利用者を含む利用者との間の意思疎通を図り、介護業務に従事するもの。
※ 施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。
このように、在留資格「特定活動」(本邦大学卒業者)では幅広い業務を認められるので、ビザ申請をする外国人の学歴や日本語能力を確認し、条件を満たすのであれば、このビザの申請を検討する価値があると言えます。
外国人採用時は、ぜひ以上の点を確認し、特定活動ビザ(本邦大学卒業者)に合うかどうかチェックしてみてください。
特定活動ビザ(接客ビザ)について、詳しくは特定活動46号のページをお読みください。
▼ 在留資格「特定技能」について
飲食店の接客業務や、ホテルのフロント、介護施設における介護業務、建設現場における建設作業、ビルクリーニング等の特定の業種の業務に外国人に従事してほしい場合には、2019年から新しくはじまった在留資格「特定技能」が適合します。
この在留資格(ビザ)は、ビザ申請をする外国人が一定の技能と日本語能力を有していることを条件にして、特定の業種における即戦力として就労することを期待するビザです。
この「一定の技能」と「日本語能力」を有しているかどうかは、業種毎に開催される技能試験と日本語能力試験によって確認されます。
ただし、ビザ申請をする外国人が技能実習2号を良好に修了し、実習で学んだ分野に就職する場合には、技能試験と日本語試験は免除されます。
▼ 在留資格「技術・人文知識・国際業務」について
日本で就労ビザをもって働いている7割以上の外国人が持っている在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」です(「技能実習」を除く)。
このビザは、上記のようにシステムエンジニア、プログラマー、精密機械器具等の設計や開発の技術者、経理、金融、総合職、デザイナー、私企業の語学教師、翻訳・通訳者等の、いわゆるホワイトカラーの業務に従事することをその内容とします。
このビザを申請するにあたって重要なのは、ビザ申請をする外国人の学歴(原則として日本の専門学校、日本の短期大学・大学・大学院、海外の大学・大学院)又は職歴、専攻内容、会社で従事する業務内容、外国人の学歴・専攻と会社での業務内容との間の関連性、外国人に支払われる報酬額、会社事業の適正性・安定性・継続性です。
この内、外国人の学歴・専攻と会社での業務内容との間の関連性がどの程度まで求められるかは、採用しようとしている外国人の学歴によって異なります。
3. 学歴によってもできる仕事は異なる?
▼ 専門学校卒の場合
外国人が専門学校を卒業し、専門士の称号を付与されている場合には、「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請はできるものの、卒業した専門学校で専攻した内容と会社の業務内容との間に強い関連性が認められなければなりません。
例えば、デザイナー業務に従事するのであれば専門学校でファッションデザインを、システムエンジニアやプログラマー業務に従事するのであれば情報工学を、ホテルのフロントや翻訳通訳業務に従事するのであれば観光・ホテルビジネス、通訳を専攻していれば、「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得できる可能性が高いです。
逆に言えば、専門学校でファッションデザインを専攻した外国人が、その学歴を基にしてホテルのフロント業務に従事するために「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得できる可能性は極めて低いです。
▼ 大学卒の場合
外国人が4年制の大学以上の教育機関を卒業し、学士や修士、博士の称号を付与されている場合には、卒業した学校で専攻した内容と会社の業務内容との間の関連性の審査は緩和されます。
つまり、必ずしも学校で専攻した内容と業務内容が直結している必要はありません。
しかし当然ですが、どのような学歴を基に「技術・人文知識・国際業務」を申請する場合にも、従事する業務の内容が一定の専門性を有していることが求められます。
この審査の中にある「専攻した内容と会社の業務内容との関連性」の部分で、不安を抱く採用担当者の方が大変多いです。
もし、この「業務内容とビザの関連性」について確認をされたい企業の採用担当者の方は、一度、ビザを専門に扱っている行政書士に相談すると良いでしょう。
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